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20242024.11.28- おもしろ半分のイタズラで、認知症利用者の髪にリボンを結んでブログにアップした職員
《検討事例》 ≫[関連資料・動画はこちらから]
専門学校を卒業して4月に入社した女性介護職員Aは特養に配属されました。ある晩、Aは夜勤職員として就寝の介助をしていました。認知症のある女性利用者Mさんの居室で、なかなか寝ようとしないMさんの髪にリボンを8つ結びました。Mさんが喜んだので、Mさんの顔をスマホで写メして、自分のブログに載せました。ブログには「認知症のおばあちゃんは可愛い」と書き込みました。
Aは自分のブログに施設名を実名で掲載していたため、Mさんの孫がおばあちゃんの施設名で検索をかけた時に、このブログがヒットして写真を発見しました。祖母の写真を見つけた孫はすぐにお父さん(Mさんの息子さん)にこのことを知らせました。激怒した息子さんは「この介護職の行為は虐待だ、訴訟を起こすぞ」と施設長に迫りました。
施設長はすぐにA職員を呼び、Mさんの髪にイタズラをした事実を確認し、Aの行為が高齢者虐待であり許されないことであると厳しく叱責しました。Aは泣きながら「そんなつもりはなかった」と訴えましたが、施設長は市に虐待事件として通報し、個人情報の漏洩事故としても事故報告をしました。施設の主任以上の役職者は深刻な事態ながらも、「介護職員としてあり得ないことだ、理解しがたい」と一様にため息をつきました。
施設長はAの将来も考えて依願退職で済ませようとしましたが、Mさんの息子さんが納得しないため、介護職員Aを懲戒解雇処分としました。市から改善計画書を求められ、施設長は再発防止策として「介護職のモラルアップのために職員教育を徹底する。そのために毎朝全職員で倫理要綱を唱和する」と書きました。
《解説》
■なぜ施設長は虐待行為と判断したのか?
判断能力の無い認知症の利用者の髪に、たくさんのリボンを付けて写真に撮る行為は虐待行為です。施設長が適切な対応を行ったため、息子さんも理解を示して訴訟を思いとどまりました。本人が肉体的・精神的な苦痛を感じなくても、認知症の利用者の人格を貶める行為は虐待行為と認定されます。
12年前、特養で認知症の利用者に性的な暴言を吐き家族に録音されるという前代未聞の事件が起こりましたが、市はこの行為を性的虐待と認定しました。認知症の利用者本人が暴言を理解できなくても、人格を貶める行為は、人の尊厳を損なう人権侵害であり虐待行為なのです。
また、ブログに認知症の利用者の写真を掲載するという行為は、個人情報の漏洩に該当しますが、その被害の大きさは健常者の個人情報の漏洩と比べ重大です。なぜなら、知的なハンディのある人の個人情報は、プライバシー性の高いセンシティブ情報でその漏洩は人権侵害とみなされるからです。
■「そんなつもりはなかった」と言った新人職員
本事件が発覚した時、施設長以下中堅職員は「そんなバカなことをする介護職がいるのか?」と驚きましたが、本人には悪いことをしたという認識はありませんでした。この問題が発覚した時には、「そんなつもりはなかった」と涙ながらに訴えたので周囲は呆れましたが、きっと嘘ではないのでしょう。採用試験の面接でも「認知症のおばあちゃんは可愛いから大好きです」と発言したと言いますから、本当にそう思っていたのでしょう。採用の段階で介護職として重要な倫理観が備わっていないことを見抜いていたら、この不祥事は避けられたかもしれません。
呆れるようなコンプライアンス違反で大問題になった時にも、その行為を行った本人にその重大性の認識が無いことが良くあります。つまり、管理する側は「こんなことは当たり前だろう」と考えていることが、違反する本人たちから見れば当たり前ではないのです。この新人職員のように、重要なことを知らなかったために、過ちを犯して罰を受けるのですから本人も可哀そうなのですが、重要なルールはこれを知らなかったことがルールに違反した時の言い訳にはならないのです。
では、管理者側から当たり前という重要な認識が備わっていない若い職員に対して、どのようにして認識してもらったら良いのでしょうか?倫理観という漠然とした能力が備わっているかどうかを見抜くことは容易ではありませんから、やはり研修によって一つ一つ教育しなければなりません。
■やってはいけないことを教える
法人の理事長からこの不祥事の再発防止策を求められた施設長は、「それは採用時に見抜かなければどうしようもない。職場での教育は無理」と答えました。なぜなら、倫理観はその人間の成長過程において少しずつ身に付くものであって、職場の研修で身に付かないからです。しかし、この不祥事の再発防止のために、何かをしないと施設長も安心できません。そこで、施設長は介護現場で起きている「職員の倫理観の欠落による不祥事の事例」を調べて、これを材料に研修をしようということになりました。
施設長は知り合いの施設長にメールで相談し、いくつかの施設から不祥事の事例を提供してもらいました。予想した通り「その時のノリで軽い気持ちでやっちゃった」というものがいくつもありました。中にはデイの管理者が障害者手帳を利用者から借りて、外出行事の時の博物館の入場料を行事参加者全員無料にして“経費を節約”して問題になったという悪質な確信犯の事例もありました。
■実際に研修をやってみたら
さて、施設長は知り合いの施設長から教えてもらった事例から、12件の介護職のコンプライアンス違反事例を使って研修を行いました。事例をグループで討議して、何が不適切な行為なのか、何がコンプライアンスに違反するのかを職員に考えさせるのです。事例を選んでいる時に、施設長は「さすがにこんな基本的なルールが分からない職員はいないだろう」という事例もありました。しかし、実際に研修をやってみるとビックリ。どのような規則に違反するかと言う問いに答えられない職員がたくさんいましたが、「これってなぜルール違反なんですか?」と疑問を口にする職員がたくさんいたのです。コンプライアンスに対する認識は個人によって大きな違いがありますし、年代によっても大きな差がありますから、「こんなことは当たり前」と考えてはいけないのです。
施設長がコンプライアンス研修に使った「職員の倫理観の欠落による不祥事の事例」の中には、次のような事例もありました。虐待などの職員の不祥事が起きると、「倫理要綱を毎日唱和する」などの形式的な対策を考える管理者がいますが、事例を見ると職員の倫理観を向上させることがいかに難しいか良く分かります。
〇忘年会で盛り上がり利用者にもカツラをかぶってもらった
クリスマスの行事のアトラクションで、職員が禿げ頭のカツラを買ってきてかぶり利用者にウケて盛り上がった。盛り上がったついでに、認知症の男性利用者の頭にカツラをのせたら、利用者にもウケて、職員が自分のポケットからスマホを出して写メしていた。
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20242024.11.28- 転倒骨折で入院し肺炎で死亡、キーパーソンの長男は納得したが次男が訴訟提起
《検討事例》 ≫[関連資料・動画はこちらから]
重い認知症のNさん(男性89歳)は、半身麻痺は軽く車椅子から立ち上がり、他の利用者を叩くなどの迷惑行為をするので、職員は絶えず注意を払っています。キーパーソンの長男は穏やかな方で、Nさんの暴力などで、施設に迷惑をかけていることを申し訳なく思っていました。ある時、機械浴の介助中にNさんが職員の腕を強く握ったため、職員が振り払おうとしてストレッチャーから転落させてしまいました。病院に救急搬送しましたが、大腿骨骨折と診断され入院の上手術をすることになりました。
施設では、入院中も施設職員が見舞いに訪れ様々な援助をしたので、日頃から施設に好意的なキーパーソンの長男は、治療費などの請求もしてきませんでした。しかし、その後入院先の病院で急激に身体機能が低下し衰弱が激しくなり、入院から2カ月後に肺炎で急死してしまいました。
Nさんの葬儀に参列した施設長に対して、東京に住んでいるという次男が「父の転倒・死亡事故について施設に法的責任があるのではないか?」と言いました。長男は「施設のみなさんには本当に良くしていただいたのに失礼なことを言うな」とたしなめました。葬儀の後にも長男が施設にやってきて、「次男は大学から東京に行ったままほとんど戻らないので、こちらの事情が分からず失礼をしました」と恐縮していました。ところが、1カ月後次男が施設を相手取って「Nさんが転倒して死亡したことについて施設に過失がある」と賠償訴訟を起こしました。
《解説》
■キーパーソンへの依存は禁物
この事故で施設側は、キーパーソンの長男が次男を説得してくれるだろうと安心していました。ところが、利用者が事故をきっかけに亡くなると、葬儀に集まった子から異論が出ました。次男は長男に「お兄さんは施設に世話になっているという負い目があるから」と、施設に対する弱腰な姿勢を責めます。他の子も次男と同じ意見です。次男は「私がお兄さんの代わりに施設と交渉する」と言って、施設に乗り込みます。
ここでも、長男は「施設には大変お世話になっているから」と次男を諌めようとしました。「長男に任せておいても、施設に賠償請求はできない」と考えた次男は、東京に戻ってから弁護士を雇い訴訟を起こしたのです。相続権がある子であれば誰でも損害賠償訴訟を起こせますから、「長男が施設の味方をしてくれていたのに」と悔やんでも後の祭りです。
この事件のように、利用者の存命中は利用者に関する全ての決定権がキーパーソンの長男に一任されていて、他の子は異議を唱えません。しかし、いざ利用者が亡くなると相続財産も絡んで様々な諍いが起こり、施設での事故にまで責任追及が及びます。キーパーソンという家族は利用者の在宅介護を経験している家族が多く、比較的施設運営に関して理解があり、施設ともコンセンサスの取りやすい存在です。しかし、他の子の中では「権利の主張もできないお人好し」という評価になってしまうのです。配偶者のキーパーソンは子に弱い
次は、配偶者がキーパーソンという事例を挙げましょう。重い認知症の妻を献身的に介護してきた、キーパーソンの夫の事例の事例です。利用者がトイレ介助中に暴れて転倒し骨折してしまいましたが、日頃から手のかかる妻の介護に恐縮している夫は治療費の請求をしませんでした。ところが、事故の知らせを聞いて実家に帰って来た次女が、父の態度に異議を唱えたのです。「施設の過失で転倒骨折したのだから、施設が治療費を支払うのは当たり前」と、父に代わって施設に賠償請求をしてきたのです。
利用者の妻は83歳でキーパーソンの夫は81歳です。これくらいの高齢になると家族の中の主導権は子が握っていて、父と言えどもいざと言う時には子の意見には従わざるを得ません。次女は執拗に慰謝料の金額にこだわり、二言目には「訴訟」を口にする権利主張の強い人でしたから、解決までには施設も大変苦労しました。この施設ではこのトラブル以降、利用者のキーパーソンが配偶者の場合は、必ずセカンドキーパーソンとして、子を指定してもらい人間関係を作るよう努めています。「お父様がご病気などの時に、施設から必要なご連絡をさせていただくお父様の代わりのご家族を決めて下さい」とお願いしているのです。キーパーソンが利用者の配偶者では、ご高齢ですから何があっても不思議ではありません。キーパーソンの代替わり
18年前に特養に入所された利用者Hさん(女性)は当時78歳でキーパーソンの息子さんは56歳でした。18年経った今、ご本人は96歳でキーパーソンの息子さんも74歳になってしまいました。息子さんは会社を退職して毎日のように施設にやってきますから、施設としては息子さんと信頼関係も十分にできていて、大きな問題は起こりませんでした。
ところが、ある時Hさんが居室で転倒して大たい骨を骨折してしまいました。相談員は、息子さんに対して「夜中にベッドから降りようとして転倒したので、防ぎようがなかった」と不可抗力であることを説明しました。しかし、突然お孫さんが来所され「介護記録と事故報告書を見せて欲しい」と言って来ました。相談員が驚いてキーパーソンの息子さんに電話をすると「今回の事故の件は息子(孫)が対応する」と言われてしまいました。
お孫さんは53歳と働き盛りで世帯の生計維持者ですから、施設入所の祖母が入院すれば費用を負担しなければなりません。施設が気付かない間に世代交代が起こり、利用者の息子さんは既に家族の中心的存在ではなかったのです。利用者が高齢化しキーパーソンの家族も同様に高齢化してきていますから、事故が起きた時はキーパーソンだけでなく家族の決定権者が誰かを見極めて対応しなければなりません。
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20242024.11.28- リフト浴で安全ベルトを装着せずに溺水、翌日肺水腫で死亡し職員が刑事告訴された
《検討事例》 ≫[関連資料・動画はこちらから]
Mさん(90歳女性)は要介護度4の特養入所者で、入浴介助は固定式のリフト浴で行っています。ある日、介護職員(介護福祉士)がMさんを入浴させようとすると、いつものように安全ベルトの装着を嫌がります。安全ベルトの材質が硬いため、きちんと装着すると肌が痛いのです。仕方なく安全ベルトを装着せずに、そのままリフトを浴槽に下ろしましたが、お湯に浸かる時に突然バランスを崩して、顔がお湯に浸かってしまいました。介護職員は慌ててリフトを上げましたが、Mさんがひどくむせ込むので、看護師を呼んでバイタルチェックの上、居室で安静にして様子を見ることにしました。
ところが、その日の晩11時頃、Mさんがひどく咳き込み、唾液に血液が混じっていたため救急搬送しました。病院では、カテーテル挿入時に血尿が見られ、吐血もあったためICUで抗生剤の点滴投与を受けました。医師が「雑菌の多い風呂のお湯が肺に入り肺水腫を起こしている」と駆けつけて来た息子さんに説明したため、激怒して相談員に詰め寄る息子さんに対して、「リフト浴の介助ミスでお湯に顔が浸かってしまった」と相談員が何度も謝罪しました。
Mさんが翌日死亡したため、警察が業務上過失致死の疑いで介護職員に事情を聴取しましたが、事件性なしとして捜査はありませんでした。しかし、息子さんは職員に事故状況を聞いて回り、安全ベルトの不装着が事故原因であったことを聞き出し、加害者である職員と施設長を警察に刑事告訴しました。施設長は損害賠償金の上乗せを提示しましたが、「施設は事故を隠ぺいしようとした、許せない」と言って交渉には応じてくれません。
《解説》
■事故の隠ぺいと受け取られた
リフト浴でバランスを崩して溺水し浴槽のお湯を飲んだことは、明らかな事故でありヒヤリハットではありません。事故が発生した時家族連絡を入れること、経過観察する場合に家族の了解を得ることは事故対応の原則です。
ところが、勝手な判断でルールを曲げる職員がいます。「誤薬したのに家族連絡もせず経過観察をする」「誤えんしたがすぐに回復したので家族連絡せず受診もしない」などの事例が見受けられます。その後も利用者に何らの損害も発生しなければ、事故事実を家族に知らせない施設さえあるのです。
しかし、意図に反して経過観察中に重篤な容態に陥った時、家族は施設の事故対応を、どのように受け止めるでしょうか?「事故を隠ぺいする意図で受診をしなかったために、適切な処置が遅れ重篤な容態になった」と考え、事故よりも組織ぐるみの隠ぺい工作が重大な不正であると考えます。
事故発生時に家族連絡しないことについて、「家族を煩わせたくないから」と言い訳をする施設がありますが、もってのほかです。事故後の迅速な家族連絡を励行することは、何も隠すことなく家族に知らせている、という姿勢を表すことにもなるのです。施設内で起こることを全て家族が知ることはできませんから、重大事故になればちょっとした疑いでも重大な疑惑になることを肝に銘じなければなりません。
■事件性がないのに刑事告訴されるのか?
同じ過失でも、ちょっとした不注意から起きる事故と、誰の目にも明らかに危険と考えられる行為によって起こる事故があります。前者は過失が軽いと判断され、後者は過失が重いとみなされます。職員の過失が重い事故で、死亡などの重大な事故に至れば、職員個人が業務上過失致死傷罪という刑法の罪に問われることがあります(※)。過失が重い(重過失)と判断されるのは、著しく注意を欠いた場合やルールに違反して故意に危険な行為を行った場合などですが、職員個人の注意義務が関係するケースもあります。
事故を起こした職員個人が特別高い注意義務を課されている場合などは、刑事責任が問われやすくなるのです。具体的には、看護師や介護福祉士などの国家資格を持つ者や、職場の安全管理責任を負っているような管理者の職位にある者などが該当します。
実際に、看護師はその国家資格によって高い注意義務を要求されているので、極めて初歩的なミスで重大事故を起こすと、業務上過失致死傷罪に問われるケースが珍しくありません。同様に国家士資格者である介護福祉士も高い注意義務を課されているのです。
本事例ではおそらく事故の直接の結果として死亡しなかった(溺死ではなかった)ので、警察は事件性なしと判断したのでしょう。しかし、故意に安全ベルトの装着を怠った介護職員の過失責任は重く、また、このように明らかに危険な業務を放置した管理者の責任も同様に重いと判断され、被害者から刑事告訴されてしまったのです。被害者が刑事告訴に踏み切ったのは、職員と管理者の責任の他に「隠ぺいしようとした」という組織の責任を追及したかったのかもしれません。
実際に施設の業務運営や設備環境などを、詳細にチェックしてみると常識では考えられないような危険が何の対応もなされず放置されていることが良くあります。特に入所施設は家族の目に触れない部分が多く、チェックが入りにくいので、外部の目で安全管理体制の点検をしない限り改善するのは難しいと思われます。
※刑法第211条:業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
■介護事故で職員が刑事告訴されたら
職員が故意に安全ベルトを装着しなかったために、利用者が浴槽で溺れたのですから、過失が重いことは間違いありません。職員は介護福祉士という国家資格を持つ注意義務も高い者ですから、その責任が重いことは明白です。その上家族は「事故を隠ぺいする意図で経過観察したことが死亡という重大な結果を招いた」と考えていますから、被害者感情はピークに達して、「損害賠償だけでは許せない」と感じています。当然加害者である職員や施設を罰してやろう、という感情が湧いてきます。
事故の発生状況から警察が事件性なしと判断すれば、加害者が刑事責任を問われることがありませんが、被害者は加害者に対する刑事罰を求めて、警察に対して刑事告訴を行うことができます。警察が告訴状を受理すれば、事件として捜査され加害者が刑事罰を受ける可能性があります。
本事例では、警察が業務上過失致死の疑いで介入した段階で、被害者の遺族への対応を手厚く行うべきだったのです。具体的には、理事長などの地位の高い法人の経営者が直接何度も謝罪に足を運ぶこと、安全管理の手落ちを認めて公表し再発防止策を具体的に提示することなどです。そのような対応で実際には被害者は刑事告訴に踏み切ることを思いとどまるケースが多いのです。刑事告訴後であっても被害者への対応によっては告訴を取り下げるケースもありますから、まだ、手遅れではありません。経営者らは被害者遺族に対して誠心誠意の対応をすべきなのです。
交通事故や労災事故などで過失の重い重大事故が発生すると、警察が事件性なしと判断しても、被害者感情を癒すことを重要視して、経営者自ら何度も弔問に訪れるのは被害者の刑事告訴を怖れるからです。介護事業を運営する法人の多くが経営者に当事者意識が乏しく、法人の致命傷につながりかねない危機への対応体制がありません。
■装着しにくい安全ベルトは製品欠陥
最後に「肌が触れると傷ができるほど硬い材質で全ての利用者が装着を嫌がる」という安全ベルトも、大きな問題です。安全ベルトはリフト浴という介護機器が持つリスクを防止するために必要不可欠の安全装置です。入浴用の機器ですから素肌に直接触れることが前提の安全装置なのに、硬い素材で肌が傷ついてしまい装着しにくいのです。このことは、安全装置が機能しないことを意味していますから、製造物責任法の製品欠陥に該当します。ですから、本事例の損害賠償責任も最終的にはメーカーが負担することになるかもしれません。
しかし、施設はこの事故はリフト浴の安全ベルトが原因として、被害者にメーカーに賠償請求するよう求めることはできません。施設は安全な機器を用いて安全なサービス提供をすべき契約上の債務を負っているのですから、「安全な性能の危機に買い替える」「機器の安全性に問題があればメーカーに改善させる」などの対応をしなければなりません。このような介護機器には安全性に関わる製品欠陥が大変多く見受けられ、施設が漫然と放置しているので、事故もたくさん起きています。介護機器メーカーも、「プロなんだから危険な製品も工夫して使用すべき」と改善しません。
消費者庁などから、再三にわたって注意喚起をされているにもかかわらず、施設における介護機器の安全性に対する認識は全く向上せず、多くの機器が危険なまま使用されています。本事例の安全ベルトもメーカーに要求して改善させておけば、刑事告訴という職員個人が罰則を受ける事態には至らなか
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20242024.11.28- 送迎車が飛び出してきた小学生をひき逃げしてドライバーが逮捕、真面目な人がなぜ?
《検討事例》 ≫[関連資料・動画はこちらから]
Rさんは、一部上場の有名企業を62歳まで勤め上げ定年で円満退職しました。ヘルパー2級の資格を取り、あるデイサービスに送迎車の運転業務の嘱託社員として採用されました。就職して1ヶ月後のある日、Rさんは利用者を送迎した後施設に戻る途中で、一時停止を無視して飛び出してきた小学生と危うく衝突しそうになりました。Rさんは興奮して大声で「一時停止しなきゃダメじゃないか!」と強く叱り、転倒した小学生は「ごめんなさい」と謝ったので、Rさんはそのままデイサービスに戻り業務を終了しました。Rさんはデイサービスに戻ってから、「子供が飛び出してきて衝突しそうになった」と運転日誌に書きました。
ところが、転倒した小学生は自宅に戻り母親に「車にぶつかって自転車が壊れた」と訴えました。その上、足には擦り傷ですがケガをしています。母親は車の素性を問いただしましたが、子供は「“デイサービス”という字は読めたが、あとは分からない」と言います。母親はすぐに警察に電話して、被害届を出しました。警察ではひき逃げ事件として扱い、5人の警官が一晩中周辺のデイサービスを捜索しました。明け方、車両に傷のあるひき逃げ犯のものと見られる、デイサービスの車両が発見され、Rさんはひき逃げの疑いで逮捕されてしまいました。
警察から事情聴取を受けたデイサービスの所長は「長年有名企業を勤め上げ、真面目で協調性があり、ゴールド免許だったので採用した。まさか、ひき逃げをするとは思わなかった」と言いました。しかし、その後Rさんは前職で、経理や財務を専門に担当していたため、社用車の運転経験がほとんどないことが判明しました。■道交法の事故発生時の運転者の義務を知らなかった
本事例のトラブルの直接的な原因は、運転手が交通事故発生時の対処を誤ったことです。一時停止無視とは言え、送迎車にぶつかりそうになり転倒した小学生を放置したまま運転手がその場を立ち去ったことは、重い道路交通法違反行為です。たとえ衝突していなくても、自転車の小学生が転倒してケガをしていれば、救急車を呼び警察に届け出なければならないことは、自動車運転手の常識です。
道路交通法では、交通事故を「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」と定義しており、同法72条2項では交通事故発生時の自動車運転者の義務を「負傷者の救護義務」「警察への報告義務」と定めています。ですから、本事例ではたとえ送迎車両が自転車と接触していなかったとしても、交通事故に該当しますから、負傷者の救護義務と警察への報告義務が発生するのです。特に救護義務違反はいわゆる「轢き逃げ」に該当する罪の重い行為ですから、逮捕されても仕方ありません。
ちなみに、交通事故発生時の運転者の義務違反には行政処分だけでなく刑事罰があり、負傷者の救護義務違反に対しては、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金、警察への報告義務違反でも3月以下の懲役又は5万円以下の罰金という刑罰が科されます。この運転手も免許の点数や行政処分だけでは済まされないでしょう。■運転経験が安全運転能力につながる
では、なぜ60歳を過ぎた自動車運転経験の長い真面目な人が、免許取りたてのドライバーのような初歩的なミスを犯したのでしょうか?後日判明したことですが、この運転手は前職の会社で経理・財務畑一筋であり、会社の業務用車の運転経験がほとんどありませんでした。仕事で社用車を運転する必要が無い人は、休日にマイカーしか運転しませんから、俗に言うサンデードライバーです。運転経験が少なく、自動車事故を起こした経験もないので、常識的な判断もできなかったのでしょう。
ですから本事例のトラブルの本当の原因は、運転手の非常識ではなく、前職の運転経験を確認せず安全運転適性のない人材を施設が採用してしまったことなのです。事故発生時の対応などを含む広い意味での安全運転能力は、自動車の運転経験に比例します。仕事で毎日車を運転する人は、事故に遭遇することもあるでしょうから、対処の方法を経験から学びます。介護の資格を持ち協調性があっても、肝心要の安全運転能力が一般のドライバーよりひどく劣る人材を運転手として採用してはいけません。車椅子を3台も載せるような大きな送迎車は、車体が大きく内輪差もあり、乗用車の運転に慣れている人でさえ危険が伴うのですから。
定年退職者の安全運転能力は、前職での業務用車の運転経験に左右されますから、これらの人材を運転手として採用するには、前職での業務用車の運転歴や事故の経験なども、厳しくチェックする必要があります。■運転手の安全運転教育の仕組みが必要
では、前職での運転経験が豊富な定年退職者を採用すれば、どんな場面でも安全運転ができるでしょうか?デイサービスの送迎車に必要な安全運転能力は多岐にわたり、その難しさはタクシーや路線バスなどの職業運転手に近いかもしれません。なぜなら、時間の制約の中で幅の狭い生活用道路を運転し、同時に障害のある車内の利用者の安全にも配慮しなければならないからです。道幅の狭い生活用道路で子供が飛び出せば急ブレーキを掛けて、車内の利用者がケガをするかもしれません。
では、運転手として採用した人材に対して、どのような安全運転教育を行えば良いのでしょうか?大変ユニークな取組をしている事業者がありますのでご紹介します。この法人では10か所あるデイサービスの運転手を3ヶ月に一度一か所に集めて、安全運転勉強会をやっています。毎回当番になった運転手が自分の送迎経路の地図を用意して、「どの場所にどのような危険がありどのような安全運転を行っているか」を発表するのです。
ある時の勉強会で、ベテランの運転手が次のように発表しました。「この保育園の裏口付近はお迎えのママさんの陰から園児が飛び出してくるので最徐行です」と。すると他の運転手が「私の経路にも同じような場所がありますが、他の道を通りそこを通らないようにしています」と意見を言い、しばらくの間議論が盛り上がりました。この勉強会によって、デイサービスの送迎車に必要な安全運転ノウハウが共有でき
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20242024.11.28- 利用者のセクハラ行為でサービス提供中止に、後任の事業者に伝えたケアマネジャー
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訪問介護サービスを利用している認知症が無い男性利用者Hさん(66歳)は、時々ヘルパーにわいせつな行為をして問題を起こします。事業所の管理者はサービス提供中止の意向をケアマネジャーに申し出ますが、ケアマネジャーがHさん厳しく言うとしばらくの間おとなしくなります。ところが、ある時Hさんがヘルパーの下半身に触る行為があったため、事業所は明らかな違法行為であるとしてサービス提供の中止を決めました。ケアマネジャーは苦労して後任の事業所を見つけ、ていねいに引継ぎを行いました。後任の訪問介護事業所の管理者は、ケアマネジャーに前任の事業所がサービス提供を中止した経緯を尋ね、ケアマネジャーはHさんのわいせつ行為について説明し注意を促しました。
ところが、ケアマネジャーが後任の事業所にHさんのわいせつ行為を伝えたことがHさんの耳に入り、ケアマネジャーにクレームを言ってきました。ケアマネジャーはHさんに「ケアマネジャーは介護サービスが円滑に提供されるよう他の事業所に情報を提供する義務がある」とその正当性を主張します。Hさんは、「ケアマネジャーは個人情報を漏洩し公的なサービスを受ける権利を侵害した」として県の福祉局に苦情申立を行い、弁護士を通じて慰謝料を要求してきました。
■利用者の不利益につながる個人情報は提供してはいけない
ケアマネジャーは、「ケアマネジャーは介護サービスが円滑に提供されるよう他の事業所に情報を提供する義務がある」と言っています。利用者のハラスメントに対しては事業所に情報提供を行って、事業所の従業員を守るのが当然だと考えたのでしょう。利用者はわいせつ行為が違法であることを知りながら行為に及んでいるのですから、ケアマネジャーの言い分にも一理あります。
しかし、一方で利用者の個人情報の利用には法的な制限があります。ケアマネジャーが本人の承諾を得ないでわいせつ行為の情報を他の事業者に提供することは、個人情報保護法違反や契約上の債務不履行になる恐れがありますので検証してみましょう。
個人情報保護法では、事業者が取得した個人情報を他の事業者に提供する場合、本人の承諾が必要となります。しかし、介護サービスの提供では事業者間で利用者の個人情報を共有しなければ、適切なサービス提供ができませんから、サービス提供契約時に契約書などで包括的に利用者の承諾を取り付けています。ですから、利用者の障害の状況やサービス提供内容などの情報を、他の事業者に提供しても個人情報保護法には抵触しません。
しかし、本事例のHさんのわいせつ行為の情報は、契約時に本人の承諾を取り付けた「個人情報の第三者提供」の対象になるのでしょうか?
契約時に本人の承諾を取り付けている個人情報の第三者提供では、本人に対する介護サービスの提供に必要不可欠の最低限の情報でなければなりません。そして最も重要なことは、本人の利益になる情報であることが条件となります。本人の不利益になり本人へのサービス提供の支障になるような、個人情報はたとえ連携する事業者間でも提供してはいけないのです。
このように考えると、Hさんの「ケアマネジャーは個人情報を漏洩し公的なサービスを受ける権利を侵害した」という主張が正しいことになります。では、ハラスメントなどの利用者の違法行為などの情報について、ケアマネジャーはどのように取り扱ったら良いのでしょうか?本事例のケースでは、後任の事業所が直接利用者本人に確認しなければならないことになります。
■個人情報の第三者提供の承諾には制限がある
介護事業者は本人から個人情報の第三者提供の承諾を取り付けていますが、どんな個人情報でも提供できる訳ではありません。しかし、現状はどのような個人情報は提供してはいけないのか明確になっておらず、本事例のようなトラブルが発生するのです。
では、どのような個人情報は連携する介護事業者に提供してはいけないのでしょうか?本事例から明らかになったことは、次の2点については明確にしておく必要があります。1.本人の介護サービス提供に必要な情報に限られること
これは「個人情報の利用目的の範囲内での取り扱い」という個人情報保護法の規定にもある通り、介護事業者は利用者の個人情報を介護サービスの提供以外の目的で利用してはいけませんし、第三者に提供する場合も同様です。
例えば、家族の情報は全てが直接利用者への介護サービスに必要な情報ではありませんから、限定して取り扱わなければなりません(ただし虐待など本人の安全にかかわる情報は除外)。
2.本人の不利益にならない個人情報であること
契約時に第三者提供について包括的に承諾を得てはいますが、原則は本人の承諾が必要なことは変わりません。本人の不利益につながるような個人情報は本人が承諾するはずがありませんから、包括承諾の対象外になります。
本事例のHさんのわいせつ行為の情報は、事業者や従業員の利益になる情報ですが、Hさんにとっては介護サービスを受けるに際して不利益になる情報です。家族からの理不尽で身勝手な要求などの情報も同様です。
■要配慮個人情報にも注意する
平成27年の個人情報保護法の改正において、要配慮個人情報について取得時に本人の承諾を得ることが義務化されました。要配慮個人情報とは従来センシティブ情報と言われていた、その漏洩が重大な人権侵害につながるようなプライバシー性の高い次のような個人情報を言います。要配慮個人情報については、契約書で包括的に承諾を得ていたとしても、他の事業者に情報提供する場合には個別に承諾が必要と考えなくてはなりません。
(1)人種 (「在日○○人」、「○○地区・○○部落出身」、「日系○世」など)
(2)信条 (信仰する宗教、政治的・倫理的な思想など)
(3)社会的身分 (「非嫡出子」や「被差別部落の出身」であることなど)
(4)病歴 (「肺癌を患っている」や「統合失調症で通院していた」など)
(5)犯罪の経歴 (裁判で刑の言い渡しを受けてこれが確定した事実)
(6)犯罪により害を被った事実 (「詐欺被害に遭った」「インターネットで事実無根の中傷を受けた」など)
(7)身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)など(「医師などから、身体的、精神的な障害があると診断されていること」「障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳などの交付を受けていること、本人の外見から」「明らかに身体上の障害が認められること」など)
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20242024.11.28- 「居室にカメラを設置したい」と言ってきた介護付き有料の家族、要求を拒否したらトラブルに!
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Mさん(78歳男性)は要介護度3の介護付き有料老人ホームの入居者です。60代前半からパーキンソン病を発症し徐々に進行していましたが、5年前に脳梗塞の発作を起こし軽度の左半身麻痺となり認知症も進行してきました。温厚な性格から居室で静かに絵や本を見るのが趣味でしたが、視力低下と認知症の進行で趣味に対する意欲も低下しています。
40代のITエンジニアの息子さんがおり、仕事が忙しく時折訪ねてきますが、その他の面会者はありません。ある時、息子さんが相談員に面会を求めてきて「父が職員に嫌がらせをされていると言っている。認知症があるので事実ではないかもしれないが、気になるのでスマホ連動のカメラを居室に設置したい」と言いました。カメラのパンフレットを用意して「置いておくだけで居室内の様子をスマホで常時見られる上、録画もできるので安心だ」と説明します。
相談員は「検討させて欲しい」と言って、施設長に相談しました。すると、施設長は「勝手に監視カメラなど設置できる訳ないだろう。録画されたら個人情報保護の問題もある。ダメに決まっている」と、カメラの設置を断りました。息子さんに伝えると、「自宅に安否確認のカメラを付けるのは問題ないはずだ。今時どこの家の玄関にも監視カメラがたくさん付いていて録画もしている。問題ないはずだ」と主張します。
相談員は再び検討するとして、返事を保留しましたが、施設長の答えは変わらずNoでした。息子さんは、「できないはずはない、知り合いの弁護士に相談してみる」と息巻いています。
《解説》
■母が心配なので居室カメラを付けたい
ある介護付き有料老人ホームに入所した利用者の息子さんが「母が心配なので居室にスマホ連動の見守りカメラを設置したい」と言ってきました。施設長が「居室に監視カメラを付けるなんてとんでもない」と検討もせずにすぐに拒否したため、トラブルになりました。高齢者施設の職員による虐待事件が大きく報道されるたびに、利用者を心配する家族から居室へのカメラ設置要求が増えて対応に困ります。自宅にカメラを置いてペットの様子をスマホで見て楽しむのは問題ありませんが、カメラで監視されて質の高い介護はできません。では、この息子さんの要求は拒否できるのでしょうか?
■カメラの設置は法的に可能か?
入所時からいきなり「職員は信用できないから見守りカメラで監視する」と不信感を露わにされては施設長もカチンとくるでしょう。施設長の気持ちも分からないではありませんが、何の検討も無しに拒否すればトラブルになります。まず、入居契約上カメラの設置が可能なのか、法的な可否を検証しなければなりません。
結論から言うと、本事例の息子さんの要求は拒否できないと考えられます。その根拠は次の通り。介護付き有料老人ホームはその多くが利用権方式であり、利用者は居室に対して一定の権利を持っています。そして、一般的な入居契約書であれば、入居者は事業者の許可なく「目的施設の増築・改築・移転・改造・模様替え、居室の造作の改造、敷地内に工作物を設置する」行為はできないとされています(モデル契約書20条の2)。
居室の壁にカメラを据え付ければ工作物として施設の許可が必要ですが、置くだけであれば工作物ではありませんから許可は必要ないのです。同様にサ高住の場合は賃貸住宅ですから、カメラを居室に置いても問題ありません。また、老人ホームには契約書の他に管理規程がありますが、管理規程の「居室等の使用細則」にも、カメラを置くことを制限するような条項は見当たりませんので、問題にはならないでしょう。
■カメラ設置のリスクを説明する
以上のように入居契約上見守りカメラの設置は拒否できませんが、カメラを居室に設置することは設置する家族にも様々なリスクが発生します。これらのリスクを家族に説明して思いとどまってもらわなくてはなりません。家族に次のように説明してはどうでしょうか?
まず、見守りカメラを設置すれば利用者以外の介護職員や面会者の姿も映ってしまいます。本人の了解なく他人の容姿を撮影することは、プライバシー(肖像権)の侵害で不法行為とみなされますから、撮影者は賠償請求されるかもしれません。施設が職員に容姿撮影の了解を求めることはできませんから、息子さんから各職員に了解を取ってもらわなくてはなりません。容姿が映る可能性のある他の利用者に対しても同様に了解を求めなくてはなりません。
また、スマホ連動カメラで撮影された動画の画像はデータ容量が大きく、スマホの記憶装置には保存できませんから、通信事業者のサーバーなどに保管されることになります。ストレージサーバーからのデータ流出がたびたび問題になっていますから、撮影された職員の容姿の動画データが流出すれば、個人情報の漏洩でこれも賠償問題になるかもしれません。このように、居室の利用者だけ撮影することはできませんから、居室の撮影には様々なリスクが伴うことを息子さんに説明しなければなりません。
■入居契約書や管理規程の見直しも必要
こうしてカメラ設置に伴う様々なリスクを説明することで、息子さんの要求を思いとどまらせることができるかもしれません。しかし、今後は従来考えられなかったような家族の要求が出てきますから、入居契約書や管理規程で明文化して調整することが必要になると考えられます。現実に施設側の不正や虐待の可能性はあるのですから、一方的に禁止するのではなく、家族の心配も取り除けるようなルールが必要なのです。
ところで、居室に監視カメラが付いたら、職員は利用者に親しく声をかけられなくなりますし、冗談を言って笑わせることもできないでしょう。居室から足も遠退きます。そんな味気ない生活を利用者は本当に望むのでしょうか?利用者の生活への影響も忘れてはいけません。
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20242024.11.28- 「家では口から食べていた」と家族が胃ろうの利用者に経口摂取を要求、誤嚥で死亡したら賠償請求
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ある特養で胃ろうを増設している利用者の入所が決まりました。ところが、入所寸前になって次女から「母は胃ろうがあっても口から食べることができるので、家では私が食べさせていた。多少のことがあっても責任はとるから施設でも口から食べさせて欲しい」と強く要求して来ました。
次女の要求してきた食事形態は、通常の胃ろうの利用者では考えられないものでしたが、“家でも食べられた”という言葉を信用して受け入れました。
しかし、経口摂取を開始してみると、とろみを付けた水でもムセる、5回〜10回ムセ込みが起きて長時間苦しい状態が続き、かなり無理があることが分かりました。次女はその度に「私が言ったやり方でやらないからうまくいかない」とクレームを言います。また、「自分も介助を手伝うから」と次女も手伝い経口摂取を続けました。ある日、次女がいない時に介護職員が混ぜご飯(普通食)を食べさせていると、急に苦しそうになりチアノーゼが出たため病院に救急搬送しましたが、病院で亡くなりました。次女は施設の不適切な食事介助が誤えん事故の原因だとして、訴訟を起こすと言っています。施設では、今後このようなリスクの高い介助方法の要求については、「事故が起こっても施設は一切責任を負わない」という念書に印鑑をもらうことにしました。
《解説》
■たとえ家族の要望でも施設は責任を問われる
「口から食べて死んでも本望ですから」と無理な経口摂取を要求してくる家族が時々います。では、家族の要求する介助方法で介助して事故が起きたら、施設は責任を問われるのでしょうか?「家族の無理な介助方法の要求を受け入れたのだから、施設の責任はない」と主張できるのでしょうか?前述の事故は施設の過失となり賠償責任は発生すると考えられます。たとえ家族の要求する介助方法が不適切であると施設が家族に指摘していたとしても、その介助方法を受け入れて実行してしまえば、安全配慮義務違反として過失責任を問われるでしょう。
なぜなら、家族は介護については素人であり適切な介助方法についての知識はありませんが、施設は介護のプロです。ですから、家族が適切でない介助方法を要求してきた場合は、介助方法が不適切である理由をしっかり説明し、介護方法の変更を家族に納得させた上で、適切なサービスを提供しなくてはなりません。
法的にも、介護保険法八十七条(特養の場合)に「要介護者の心身の状況等に応じて適切な指定介護福祉施設サービスを提供する」とありますから、不適切な方法と分かっている介護サービスを提供すると、介護保険法に違反していることになってしまいます。家族を説得して介助方法を変更して、適切な介護サービスを提供する法的な義務が施設にはあるのです。
■どのような要求は応えられないのか決まっていない
問題は、全ての家族の要望に応えられないにもかかわらず、「どこまで受け入れるのか、どの介助方法は断らなくてはいけないのか」その基準が明確になっていないことです。また、家族の要求する介助方法を断るのであれば、その根拠もきちんと説明できなくてはなりません。個別ケアが大切だというのですから、理由なく家族の要望する介助方法全てを断わって施設のやり方を押し通す訳には行かないのです。しかし、一方で本事例のように極めて危険と分かっている介助方法を安易に受け入れてしまえば、事故が起きた時トラブルになり責任を問われてしまいます。ですから、施設では入所時または、初回の介護計画書作成時に、正確な利用者の身体機能のアセスメントに基づき、「たとえご家族のご要望であっても、危険な介助方法の要望には応えられない」と、ハッキリ家族に説明する必要があります。
無理な介助方法の要求は、経口摂取の要求だけではありません。「父を常時見守って転倒させないで欲しい」と要求する家族や、我流の介助方法で利用者にとって不適切な方法の要求もあります。ですから、あらかじめこれらの要望には応えられないことを説明する書面を用意しておけば、家族に対しても説明がしやすくなります。では、どのような介助方法の要望に対して、どのような理由で断れば良いのでしょうか?
■どのような要求は拒否するべきか?
私たちもこれらの家族向けの説明文書を作ろうとしましたが、なかなか良い説明方法が見つかりません。そんな折、ある特養で入所時に介助方法の受け入れについて、書面で説明していると聞き見せてもらいました。入所時に次のような書面を使って家族に説明しているのです。
《家族の要望する介助方法にお応えできない場合》
当施設では、入所者様の介助方法についてご家族のご要望にできるだけお応えしたいと考えていますが、次のような介助方法については受け入れられませんのでご了承ください。
①入所者ご本人にとって不適切と考えられる介助方法(例えば本人に苦痛が生じるようなケース)
②施設業務の運営上対応が不可能な介助方法(「24時間常時見守りをして欲しい」など人員配置上不可能なケース)
③ご本人の生命の危険につながるような介助方法(「口から食べて死んでも本望だ」など家族がリスクを容認している場合でも同様です)
この介助方法の要望に対する説明は、極めて明快でご家族にとっても理解しやすいので、私たちもこの書面を使わせていただきました。この特養も以前に「口から食べて死んでも本望なので」という家族の要求を受け入れて誤えん事故で亡くなり、大きなトラブルになったことがあるそうです。
■家族が納得しない場合の対応
前出の説明方法で家族が納得してくれれば問題ありませんが、中には自分の主張する介助方法に固執して施設の説明を聞き入れない家族もいます。このような場合には、「より高度な知識を持った専門家に意見を聞きましょう」と第三者の専門家の意見を聞くようにします。例えば、本事例のようにえん下機能に合った食事形態でない食事の方法を主張された場合は、「口腔外科の医師や口腔リハビリの専門家にも意見を聞いてみましょう」と、専門家の第三者に判断を委ねれば良いのです。頑なに固執するような家族で合っても、お医者様の意見は結構受け入れてくれるケースは多いのです。最近では水のみテストが改訂され少ない水の量で、えん下機能のテストができるようになりました。STによる水のみテストによって、納得してくれた家族もいます。
しかし、最近ではご家族の中には専門的な知識を持っていて、「このメーカーのソフト食であれば、無理なく経口摂取ができる」と個別の対応に執着してくる家族もいるそうです。これらの説得が難しい家族に対してある施設長は「ちょっと乱暴な説明だけれど、私は次のように話します」と教えてくれました。「私どもの施設は介護保険という公的な制度で運営されている事業なので、利用者の生命の危険につながるような介助方法は法令で禁止されていてできないのです」と。
また、施設長は更にこう付け加えました。「食事介助中に利用者が苦しみ出して誤えんで亡くなったら、介護職は精神的に強いショックを受けて介護職を続けられなくなる人もいます。利用者の安全も大切ですが、私たちは職員も守らなくてはいけませんから」と。
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20242024.11.28- 「Mに“はたかれた”」と職員を名指しで訴える利用者、対応が遅れ「隠ぺいしようとした」と家族が虐待通報
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ある特養で職員の虐待を訴える事件が起きました。軽度認知症の女性利用者Sさんが「Mにはたかれた、見ろ、はたかれた跡や」と顎を示して、職員を名指しで主任に訴えてきたのです。確かに顎に少し赤みがかった跡らしきものがあります。M職員(男性)は日頃から言葉遣いや振舞いに少し問題があったため、主任は「もしかしたら」と考えすぐに施設長に相談しました。
施設長はすぐにM職員を呼んで、「Sさんが“Mにはたかれた”と言っている。顎に跡も付いている。どうなんだ?」と問いただしました。M職員は「虐待なんてする訳がありません。Sさんは認知症がありますから、自分でぶつけたのを勘違しているんじゃないですか?」と否定します。
施設長は主任と相談員を呼んで対応を相談しました。主任は「M職員は荒っぽい性格だから虐待の疑いがある。すぐに通報すべきだ」と言います。相談員は「認知症のある人の訴えを信じる訳にはいかない。家族と話し合って対応すべきだ」と言います。施設長は「証拠も無いのに虐待と決めつける訳にもいかない」と迷い、対応方針が決まりません。
このように施設長室で相談をしていると、面会に来た娘さんがSさんの訴えを聞き施設長室にやってきました。「父が職員に“はたかれた”と言っている。虐待じゃないか!」と大変な剣幕です。施設長が「今職員に事情を聴いていますので」と言うと、娘さんは「父は多少認知症はあるけど大事なことを間違えたりしない。本人がMだと言っているんだから間違いない」と主張します。娘さんは自ら市に虐待通報し「施設は虐待を隠そうとしている」と言いました。
《解説》
■なぜ虐待通報されてしまったのか?
本事例では、本人からの訴えを施設で把握していながら、「家族からの虐待通報」という最悪の事態になってしまいました。では虐待の訴えがあった直後にどのような対応をするべきだったのでしょうか?重要なことは「迅速な事実確認と家族連絡」です。
まずは迅速に事実確認を行わなければなりません。訴えがあった時点で施設長が直接利用者と職員双方から詳しく事情を聴き、口頭で家族に連絡します。本事例のように対応を相談してボヤボヤしていると、本人が面会に来た家族に訴えてしまいます。家族は施設からの報告よりも本人の訴えを先に聞けば「なぜすぐに家族に報告しないのか?隠そうとしているのだろう」と隠ぺい工作を疑います。家族には訴えがあったことを迅速に連絡しなければなりません。
次に、利用者と職員双方から聞き取った記録を家族に示して説明し、施設としての対応方針を説明します。虐待の疑いへの対応で最も重要なポイントは、この施設の対応方針をていねいに説明することです。施設の対応方針を家族が納得すれば、対応方針通りに調査などの対応を進めていきますが、市にも連絡を入れておきます。家族と協議した対応方針を書面で送り、調査結果について報告すると連絡します。家族には施設が隠すことなく公明正大な対応を行うことを理解してもらえば、当面大きな混乱は避けられます。
■虐待の訴えに対する対応手順はあらかじめ決めておく
どの施設でも利用者からの虐待の訴えが起こることは考えられますが、この時の対応を決めている施設はほとんどありません。本事例のように訴えの直後にモタモタして、適切な対応ができなくなってしまいますから、あらかじめ対応手順を決めておく必要があります。次の通り対応手順をまとめましたので参考にしてください。・訴えの直後に利用者、職員双方から事実を聴き取り記録する。
訴えの信ぴょう性を評価する必要はありませんから10分程度で迅速に行います。
・他の職員や利用者などから目撃情報などを聴き取り記録する。
その場に居合わせた職員や他の利用者などにも、心当たりが無いかを確認します。
・利用者と職員への聞き取り後速やかに家族に連絡する
「利用者から職員による虐待の訴えがあったのでこれから調査などの対応を行うので、対応方針を説明したい」と連絡します。
・利用者と職員の聴取記録から被害事実の信ぴょう性について家族と協議する。
たとえ認知症があっても被害の訴えが事実である可能性は高いので、訴えの信ぴょう性の評価は家族の判断に従う。
・被害事実の可能性が高いと判断すれば、事故と虐待の両面から調査を行う。
「“職員の手がぶつかった”という事故を、利用者が虐待と誤解するケースは良くありますから、虐待の有無だけではなく事故事実を綿密に調査します。
・役所や警察への通報について説明する
「施設で調査を行って虐待の事実が判明すれば、施設から市や警察に虐待通報をしますが、現時点では市に連絡を入れ随時報告を入れます」と説明します。
・疑惑のある職員の処遇について説明する
当面は被害を訴えている利用者の不安に配慮し、虐待疑惑のある職員の職場を変更します。
・調査の期間は3日~5日程度として調査を行い施設の判断を家族に伝える。
必要な調査を行い職員による虐待の可能性を家族に報告します。虐待の可能性が極めて高い場合は、証拠が無くても「虐待の事実があった」と判断して報告します。
・虐待と判断した場合は役所に報告し、場合によっては警察にも通報します。
市への報告は施設の義務であり、警察への刑事告発は家族の判断であることを家族にはきちんと説明しておきます。
・虐待の事実が判明した時は、職員の懲戒処分を行い家族に説明する。
法人の懲戒規程に則って適切に行うことを説明する。
■虐待の事実が確認できなかったら
施設では利用者と職員の聴取記録や、他の職員や利用者への聞き取り、また日頃の職員の勤務態度や過去の賞罰などを調査し、最終的な結論を出します。職員が虐待の事実を認めればすぐに決着しますが、ほとんどの場合職員は否定しますから実際はそれほど簡単ではありません。
たとえ、職員が否定しても客観的に判断して虐待の可能性が極めて高いと判断されれば、施設は虐待が発生したと判断して家族に説明し、通報などの対応を行わなければなりません。施設から警察に職員を刑事告発することもあります。
では、虐待の可能性が極めて職員が頑強に否定したらどうすれば良いでしょうか?証拠も無いのに懲戒処分にすれば、懲戒権の濫用として労働者への人権侵害となりますから注意が必要です。多くの場合、懲戒処分を行わずに他の職場に異動ということが考えられます。
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20242024.11.27- 「毎日入浴させろ、当然の権利だ」というクレーマーの主張に勝てなかった施設長!なぜ負けたのか?
《カスタマーハラスメント事例》 ≫[関連資料・動画はこちらから]
Hさん(84歳女性・要介護3)は、在宅で息子さんが介護していましたが、息子さんの仕事の都合で介護付き有料老人ホームに入所することになりました。入所前の施設の説明に対して「え?週3回しか入浴できないのですか?」と不満を漏らしました。入所後すぐに施設長に面会を求め、「母は肌が弱くきれい好きなので毎日入浴させて欲しい。家では毎日きちんと風呂に入っていた」と要求してきました。「週3回の入浴は施設の決まりですから」と施設長が断ると、「契約書には3回しか入浴できないとは書いてない。『個別のニーズに応えます』というのは嘘か?」と主張します。
その後も「施設長だって毎日風呂に入るだろう」「身体が不潔だとストレスになり病気になるし認知症も悪化する。そうなったらアンタ責任取るのか?」と執拗に要求してきます。施設長は息子さんに理解を求めようとしましたが、相手を納得させるような根拠を明確に示して説得することができません。ついに息子さんは、「毎日入浴するなんて最低限の文化的な生活だろう」ともっともらしい理屈を付けて主張し、施設長は根負けして要求を受け入れてしまいました。Hさんの息子さんは、介護職員に対して「イマドキ毎日入浴するのは当たり前だからね」と勝ち誇ったように言います。しばらくして、息子さんは1日5回の口腔ケアを要求してきました。
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《山田の解説》
■なぜ施設長は息子さんの要求を受け入れてしまったのか?
最近では入所施設でも家族によるカスタマーハラスメント(威圧的・暴力的要求)が問題になっていますが、ハラスメントの前提には理不尽で身勝手な要求があります。これらの要求に対抗できずに安易に受け入れてしまうと、増長して次々と無理な要求を繰り返してクレーマーに変貌してカスタマーハラスメントにつながるという構造があります。ですから、これらの身勝手な要求に対しては、毅然と対抗してNoと言わなければなりません。
相手はその要求根拠として一見もっともらしい理屈を付けてきます。この理屈に対して、相手が納得せざるを得ないような根拠を示して要求を断らなければなりません。Hさんの息子さんの要求根拠は、「毎日入浴しなければ病気になる」であり、その正当性の根拠は「イマドキ毎日入浴するのが当然」などでした。人によって考え方は異なりますから、これらの屁理屈のような要求根拠を、“バカらしい”と否定することもできません。では、これらのもっともらしい理屈の付いた要求に対して、どのように納得性のある根拠を示して要求を断れば良いのでしょうか?
■ 「契約上できない」とは言えない
介護付き有料老人ホームの入居契約書で「週3回を超える入浴はできない」との記載はありませんから、「契約上できない」という理由で要求を拒否することはできません。無理な要求をしてくるクレーマーの中には、契約書を隅々まで読んで自分の要求が契約上正当であることを示してくる手ごわい相手が少なくありません。
また、特養や老健などの入所施設では提供するサービスに上限が決められていませんから、もっともらしい理屈を付けてサービスの上乗せ要求をされると断りにくいという面があります。居宅サービスで「息子のご飯もついでに作って欲しい」と要求されても、「規則でできません」と容易に断ることができます。しかし、施設サービスは介護度に応じた定額の包括サービス契約であって、「飲み放題・食べ放題」と同じなのです。では相手に負けないように理論武装をして、納得せざるを得ない根拠を示して対抗するにはどうしたら良いでしょうか?
■誰もが納得できる根拠を示して拒否する
介護保険サービスは、公的な制度に基づいたサービスですから、制度運営上公平性が重視されます。ですから、本事例のように自分の利益のために特別に手厚いサービスを要求してくる場合には、公的制度であることを理由に次のように主張すれば良いでしょう。
・介護保険のサービスは介護保険制度という公的な制度で運営されているサービスなので、特定の利用者に対する過剰なサービスは利用者の公平性の観点から適切ではない。
・職員配置は介護保険制度で決められており、介護報酬も定額であり職員は増やせないので、現状の職員配置では毎日の入浴は業務の支障となる。
また、健康管理上の理由やケアの必要性を根拠に無理を言って来る場合があります。例えば、「褥瘡防止のためには2時間おきの体位変換をすべきだ」とか、「誤嚥性肺炎防止には1日5回の口腔ケアが必要だ」というような要求です。これらの要求については、「医学的根拠が無いのでケアを増やすことができない。医師の指示があれば検討する」と答えれば良いでしょう。
以上のように、クレーマーに変貌してカスタマーハラスメントにつながるような無理な要求に対しては、あらかじめ対抗手段を決めておかなければなりません。一度無理な要求を受け入れてしまうと、必ずエスカレートするのもクレーマーの特徴ですから。