投稿者: anzen-kaigo 一覧

  • 12/29
    2024
    2024.12.29
    2/3オンラインセミナー「職員不祥事防止とコンプライアンス管理」

    コンプライアンスとは何か?どのように職員の不正行為や不適切言動を防止すれば良いのか?施設・事業所管理者必見!≫案内はこちら

  • 12/24
    2024
    2024.12.24
    2月事故事例検討会「ショートでノロ発生、直後に退所した利用者が救急搬送」

    参加無料、録画配信サービス付き。介護リスクマネジメントに興味のある方は、誰でも参加できます。≫案内はこちら

  • 12/22
    2024
    2024.12.22
    2月オンライン無料セミナー「15の事例から学ぶ誤えん事故の防止対策」

    誤えん事故は防げない事故が多く、死亡事故になると賠償トラブルも発生しやすい厄介な事故です。誤えん防止対策と家族トラブル対策を事例で解説します。≫セミナー案内 ≫15の事故事例

  • 12/13
    2024
    2024.12.13
    急遽企画!無料オンラインセミナー「新型コロナ・インフルエンザの知識」

    新型コロナとインフルエンザの患者が増えてきましたので、急遽無料セミナーを企画しました。施設・事業所の感染症対策の見直しに役立つ知識を、40の問題でチェックします。事前に問題をご確認下さい。
    ≫セミナー案内 ≫40の事前確認問題 ≫お申し込み先

  • 12/12
    2024
    2024.12.12
    新作動画「みんなで取り組む虐待事故防止活動」1カ月間無料配信!

    新作動画「みんなで取り組む虐待事故防止活動」を、2月1日より1ケ月間無料配信いたします。施設・事業所でお申し込みください。
    ≫無料配信案内 ≫動画パンフレット ≫YouTube抜粋版

  • 12/06
    2024
    2024.12.06
    1月無料オンラインセミナー「15の事例で学ぶ転倒骨折事故防止対策」

    転倒事故はその8割が防げない事故ですから、防止できない事故の家族トラブル防止策も重要です。転倒防止対策とあわせて家族トラブルの防止対策も学びましょう。≫セミナー案内 ≫15の事故事例

  • 12/01
    2024
    2024.12.01
    12月安全な介護にゅーす:転倒事故後に経過観察したが側頭部強打で硬膜下出血

    事故後の家族トラブルが減りません。過大な要求をする一筋縄では行かぬ家族が増えたのですから、トラブルを回避対応をマニュアル化しなければなりません。家族対応チェック表付。≫読者登録はこちらから

  • 11/28
    2024
    2024.11.28
    おもしろ半分のイタズラで、認知症利用者の髪にリボンを結んでブログにアップした職員

    《検討事例》                   ≫[関連資料・動画はこちらから]  
    専門学校を卒業して4月に入社した女性介護職員Aは特養に配属されました。ある晩、Aは夜勤職員として就寝の介助をしていました。認知症のある女性利用者Mさんの居室で、なかなか寝ようとしないMさんの髪にリボンを8つ結びました。Mさんが喜んだので、Mさんの顔をスマホで写メして、自分のブログに載せました。ブログには「認知症のおばあちゃんは可愛い」と書き込みました。
     Aは自分のブログに施設名を実名で掲載していたため、Mさんの孫がおばあちゃんの施設名で検索をかけた時に、このブログがヒットして写真を発見しました。祖母の写真を見つけた孫はすぐにお父さん(Mさんの息子さん)にこのことを知らせました。激怒した息子さんは「この介護職の行為は虐待だ、訴訟を起こすぞ」と施設長に迫りました。
     施設長はすぐにA職員を呼び、Mさんの髪にイタズラをした事実を確認し、Aの行為が高齢者虐待であり許されないことであると厳しく叱責しました。Aは泣きながら「そんなつもりはなかった」と訴えましたが、施設長は市に虐待事件として通報し、個人情報の漏洩事故としても事故報告をしました。施設の主任以上の役職者は深刻な事態ながらも、「介護職員としてあり得ないことだ、理解しがたい」と一様にため息をつきました。
    施設長はAの将来も考えて依願退職で済ませようとしましたが、Mさんの息子さんが納得しないため、介護職員Aを懲戒解雇処分としました。市から改善計画書を求められ、施設長は再発防止策として「介護職のモラルアップのために職員教育を徹底する。そのために毎朝全職員で倫理要綱を唱和する」と書きました。
    《解説》
    ■なぜ施設長は虐待行為と判断したのか?
     判断能力の無い認知症の利用者の髪に、たくさんのリボンを付けて写真に撮る行為は虐待行為です。施設長が適切な対応を行ったため、息子さんも理解を示して訴訟を思いとどまりました。本人が肉体的・精神的な苦痛を感じなくても、認知症の利用者の人格を貶める行為は虐待行為と認定されます。
    12年前、特養で認知症の利用者に性的な暴言を吐き家族に録音されるという前代未聞の事件が起こりましたが、市はこの行為を性的虐待と認定しました。認知症の利用者本人が暴言を理解できなくても、人格を貶める行為は、人の尊厳を損なう人権侵害であり虐待行為なのです。
     また、ブログに認知症の利用者の写真を掲載するという行為は、個人情報の漏洩に該当しますが、その被害の大きさは健常者の個人情報の漏洩と比べ重大です。なぜなら、知的なハンディのある人の個人情報は、プライバシー性の高いセンシティブ情報でその漏洩は人権侵害とみなされるからです。
    ■「そんなつもりはなかった」と言った新人職員
    本事件が発覚した時、施設長以下中堅職員は「そんなバカなことをする介護職がいるのか?」と驚きましたが、本人には悪いことをしたという認識はありませんでした。この問題が発覚した時には、「そんなつもりはなかった」と涙ながらに訴えたので周囲は呆れましたが、きっと嘘ではないのでしょう。採用試験の面接でも「認知症のおばあちゃんは可愛いから大好きです」と発言したと言いますから、本当にそう思っていたのでしょう。採用の段階で介護職として重要な倫理観が備わっていないことを見抜いていたら、この不祥事は避けられたかもしれません。
    呆れるようなコンプライアンス違反で大問題になった時にも、その行為を行った本人にその重大性の認識が無いことが良くあります。つまり、管理する側は「こんなことは当たり前だろう」と考えていることが、違反する本人たちから見れば当たり前ではないのです。この新人職員のように、重要なことを知らなかったために、過ちを犯して罰を受けるのですから本人も可哀そうなのですが、重要なルールはこれを知らなかったことがルールに違反した時の言い訳にはならないのです。
    では、管理者側から当たり前という重要な認識が備わっていない若い職員に対して、どのようにして認識してもらったら良いのでしょうか?倫理観という漠然とした能力が備わっているかどうかを見抜くことは容易ではありませんから、やはり研修によって一つ一つ教育しなければなりません。
    ■やってはいけないことを教える
     法人の理事長からこの不祥事の再発防止策を求められた施設長は、「それは採用時に見抜かなければどうしようもない。職場での教育は無理」と答えました。なぜなら、倫理観はその人間の成長過程において少しずつ身に付くものであって、職場の研修で身に付かないからです。しかし、この不祥事の再発防止のために、何かをしないと施設長も安心できません。そこで、施設長は介護現場で起きている「職員の倫理観の欠落による不祥事の事例」を調べて、これを材料に研修をしようということになりました。
     施設長は知り合いの施設長にメールで相談し、いくつかの施設から不祥事の事例を提供してもらいました。予想した通り「その時のノリで軽い気持ちでやっちゃった」というものがいくつもありました。中にはデイの管理者が障害者手帳を利用者から借りて、外出行事の時の博物館の入場料を行事参加者全員無料にして“経費を節約”して問題になったという悪質な確信犯の事例もありました。
    ■実際に研修をやってみたら
     さて、施設長は知り合いの施設長から教えてもらった事例から、12件の介護職のコンプライアンス違反事例を使って研修を行いました。事例をグループで討議して、何が不適切な行為なのか、何がコンプライアンスに違反するのかを職員に考えさせるのです。事例を選んでいる時に、施設長は「さすがにこんな基本的なルールが分からない職員はいないだろう」という事例もありました。しかし、実際に研修をやってみるとビックリ。どのような規則に違反するかと言う問いに答えられない職員がたくさんいましたが、「これってなぜルール違反なんですか?」と疑問を口にする職員がたくさんいたのです。コンプライアンスに対する認識は個人によって大きな違いがありますし、年代によっても大きな差がありますから、「こんなことは当たり前」と考えてはいけないのです。
     施設長がコンプライアンス研修に使った「職員の倫理観の欠落による不祥事の事例」の中には、次のような事例もありました。虐待などの職員の不祥事が起きると、「倫理要綱を毎日唱和する」などの形式的な対策を考える管理者がいますが、事例を見ると職員の倫理観を向上させることがいかに難しいか良く分かります。
    〇忘年会で盛り上がり利用者にもカツラをかぶってもらった
    クリスマスの行事のアトラクションで、職員が禿げ頭のカツラを買ってきてかぶり利用者にウケて盛り上がった。盛り上がったついでに、認知症の男性利用者の頭にカツラをのせたら、利用者にもウケて、職員が自分のポケットからスマホを出して写メしていた。

  • 11/28
    2024
    2024.11.28
    転倒骨折で入院し肺炎で死亡、キーパーソンの長男は納得したが次男が訴訟提起

    《検討事例》                   ≫[関連資料・動画はこちらから] 
    重い認知症のNさん(男性89歳)は、半身麻痺は軽く車椅子から立ち上がり、他の利用者を叩くなどの迷惑行為をするので、職員は絶えず注意を払っています。キーパーソンの長男は穏やかな方で、Nさんの暴力などで、施設に迷惑をかけていることを申し訳なく思っていました。ある時、機械浴の介助中にNさんが職員の腕を強く握ったため、職員が振り払おうとしてストレッチャーから転落させてしまいました。病院に救急搬送しましたが、大腿骨骨折と診断され入院の上手術をすることになりました。
    施設では、入院中も施設職員が見舞いに訪れ様々な援助をしたので、日頃から施設に好意的なキーパーソンの長男は、治療費などの請求もしてきませんでした。しかし、その後入院先の病院で急激に身体機能が低下し衰弱が激しくなり、入院から2カ月後に肺炎で急死してしまいました。
    Nさんの葬儀に参列した施設長に対して、東京に住んでいるという次男が「父の転倒・死亡事故について施設に法的責任があるのではないか?」と言いました。長男は「施設のみなさんには本当に良くしていただいたのに失礼なことを言うな」とたしなめました。葬儀の後にも長男が施設にやってきて、「次男は大学から東京に行ったままほとんど戻らないので、こちらの事情が分からず失礼をしました」と恐縮していました。ところが、1カ月後次男が施設を相手取って「Nさんが転倒して死亡したことについて施設に過失がある」と賠償訴訟を起こしました。
    《解説》
    ■キーパーソンへの依存は禁物
    この事故で施設側は、キーパーソンの長男が次男を説得してくれるだろうと安心していました。ところが、利用者が事故をきっかけに亡くなると、葬儀に集まった子から異論が出ました。次男は長男に「お兄さんは施設に世話になっているという負い目があるから」と、施設に対する弱腰な姿勢を責めます。他の子も次男と同じ意見です。次男は「私がお兄さんの代わりに施設と交渉する」と言って、施設に乗り込みます。
    ここでも、長男は「施設には大変お世話になっているから」と次男を諌めようとしました。「長男に任せておいても、施設に賠償請求はできない」と考えた次男は、東京に戻ってから弁護士を雇い訴訟を起こしたのです。相続権がある子であれば誰でも損害賠償訴訟を起こせますから、「長男が施設の味方をしてくれていたのに」と悔やんでも後の祭りです。
    この事件のように、利用者の存命中は利用者に関する全ての決定権がキーパーソンの長男に一任されていて、他の子は異議を唱えません。しかし、いざ利用者が亡くなると相続財産も絡んで様々な諍いが起こり、施設での事故にまで責任追及が及びます。キーパーソンという家族は利用者の在宅介護を経験している家族が多く、比較的施設運営に関して理解があり、施設ともコンセンサスの取りやすい存在です。しかし、他の子の中では「権利の主張もできないお人好し」という評価になってしまうのです。

    配偶者のキーパーソンは子に弱い
    次は、配偶者がキーパーソンという事例を挙げましょう。重い認知症の妻を献身的に介護してきた、キーパーソンの夫の事例の事例です。利用者がトイレ介助中に暴れて転倒し骨折してしまいましたが、日頃から手のかかる妻の介護に恐縮している夫は治療費の請求をしませんでした。ところが、事故の知らせを聞いて実家に帰って来た次女が、父の態度に異議を唱えたのです。「施設の過失で転倒骨折したのだから、施設が治療費を支払うのは当たり前」と、父に代わって施設に賠償請求をしてきたのです。
    利用者の妻は83歳でキーパーソンの夫は81歳です。これくらいの高齢になると家族の中の主導権は子が握っていて、父と言えどもいざと言う時には子の意見には従わざるを得ません。次女は執拗に慰謝料の金額にこだわり、二言目には「訴訟」を口にする権利主張の強い人でしたから、解決までには施設も大変苦労しました。この施設ではこのトラブル以降、利用者のキーパーソンが配偶者の場合は、必ずセカンドキーパーソンとして、子を指定してもらい人間関係を作るよう努めています。「お父様がご病気などの時に、施設から必要なご連絡をさせていただくお父様の代わりのご家族を決めて下さい」とお願いしているのです。キーパーソンが利用者の配偶者では、ご高齢ですから何があっても不思議ではありません。

    キーパーソンの代替わり
    18年前に特養に入所された利用者Hさん(女性)は当時78歳でキーパーソンの息子さんは56歳でした。18年経った今、ご本人は96歳でキーパーソンの息子さんも74歳になってしまいました。息子さんは会社を退職して毎日のように施設にやってきますから、施設としては息子さんと信頼関係も十分にできていて、大きな問題は起こりませんでした。
    ところが、ある時Hさんが居室で転倒して大たい骨を骨折してしまいました。相談員は、息子さんに対して「夜中にベッドから降りようとして転倒したので、防ぎようがなかった」と不可抗力であることを説明しました。しかし、突然お孫さんが来所され「介護記録と事故報告書を見せて欲しい」と言って来ました。相談員が驚いてキーパーソンの息子さんに電話をすると「今回の事故の件は息子(孫)が対応する」と言われてしまいました。
    お孫さんは53歳と働き盛りで世帯の生計維持者ですから、施設入所の祖母が入院すれば費用を負担しなければなりません。施設が気付かない間に世代交代が起こり、利用者の息子さんは既に家族の中心的存在ではなかったのです。利用者が高齢化しキーパーソンの家族も同様に高齢化してきていますから、事故が起きた時はキーパーソンだけでなく家族の決定権者が誰かを見極めて対応しなければなりません。

  • 11/28
    2024
    2024.11.28
    リフト浴で安全ベルトを装着せずに溺水、翌日肺水腫で死亡し職員が刑事告訴された

    《検討事例》                   ≫[関連資料・動画はこちらから] 
    Mさん(90歳女性)は要介護度4の特養入所者で、入浴介助は固定式のリフト浴で行っています。ある日、介護職員(介護福祉士)がMさんを入浴させようとすると、いつものように安全ベルトの装着を嫌がります。安全ベルトの材質が硬いため、きちんと装着すると肌が痛いのです。仕方なく安全ベルトを装着せずに、そのままリフトを浴槽に下ろしましたが、お湯に浸かる時に突然バランスを崩して、顔がお湯に浸かってしまいました。介護職員は慌ててリフトを上げましたが、Mさんがひどくむせ込むので、看護師を呼んでバイタルチェックの上、居室で安静にして様子を見ることにしました。
    ところが、その日の晩11時頃、Mさんがひどく咳き込み、唾液に血液が混じっていたため救急搬送しました。病院では、カテーテル挿入時に血尿が見られ、吐血もあったためICUで抗生剤の点滴投与を受けました。医師が「雑菌の多い風呂のお湯が肺に入り肺水腫を起こしている」と駆けつけて来た息子さんに説明したため、激怒して相談員に詰め寄る息子さんに対して、「リフト浴の介助ミスでお湯に顔が浸かってしまった」と相談員が何度も謝罪しました。
    Mさんが翌日死亡したため、警察が業務上過失致死の疑いで介護職員に事情を聴取しましたが、事件性なしとして捜査はありませんでした。しかし、息子さんは職員に事故状況を聞いて回り、安全ベルトの不装着が事故原因であったことを聞き出し、加害者である職員と施設長を警察に刑事告訴しました。施設長は損害賠償金の上乗せを提示しましたが、「施設は事故を隠ぺいしようとした、許せない」と言って交渉には応じてくれません。
    《解説》
    ■事故の隠ぺいと受け取られた
    リフト浴でバランスを崩して溺水し浴槽のお湯を飲んだことは、明らかな事故でありヒヤリハットではありません。事故が発生した時家族連絡を入れること、経過観察する場合に家族の了解を得ることは事故対応の原則です。
    ところが、勝手な判断でルールを曲げる職員がいます。「誤薬したのに家族連絡もせず経過観察をする」「誤えんしたがすぐに回復したので家族連絡せず受診もしない」などの事例が見受けられます。その後も利用者に何らの損害も発生しなければ、事故事実を家族に知らせない施設さえあるのです。
    しかし、意図に反して経過観察中に重篤な容態に陥った時、家族は施設の事故対応を、どのように受け止めるでしょうか?「事故を隠ぺいする意図で受診をしなかったために、適切な処置が遅れ重篤な容態になった」と考え、事故よりも組織ぐるみの隠ぺい工作が重大な不正であると考えます。
    事故発生時に家族連絡しないことについて、「家族を煩わせたくないから」と言い訳をする施設がありますが、もってのほかです。事故後の迅速な家族連絡を励行することは、何も隠すことなく家族に知らせている、という姿勢を表すことにもなるのです。施設内で起こることを全て家族が知ることはできませんから、重大事故になればちょっとした疑いでも重大な疑惑になることを肝に銘じなければなりません。
    ■事件性がないのに刑事告訴されるのか?
     同じ過失でも、ちょっとした不注意から起きる事故と、誰の目にも明らかに危険と考えられる行為によって起こる事故があります。前者は過失が軽いと判断され、後者は過失が重いとみなされます。職員の過失が重い事故で、死亡などの重大な事故に至れば、職員個人が業務上過失致死傷罪という刑法の罪に問われることがあります(※)。過失が重い(重過失)と判断されるのは、著しく注意を欠いた場合やルールに違反して故意に危険な行為を行った場合などですが、職員個人の注意義務が関係するケースもあります。
    事故を起こした職員個人が特別高い注意義務を課されている場合などは、刑事責任が問われやすくなるのです。具体的には、看護師や介護福祉士などの国家資格を持つ者や、職場の安全管理責任を負っているような管理者の職位にある者などが該当します。
    実際に、看護師はその国家資格によって高い注意義務を要求されているので、極めて初歩的なミスで重大事故を起こすと、業務上過失致死傷罪に問われるケースが珍しくありません。同様に国家士資格者である介護福祉士も高い注意義務を課されているのです。
    本事例ではおそらく事故の直接の結果として死亡しなかった(溺死ではなかった)ので、警察は事件性なしと判断したのでしょう。しかし、故意に安全ベルトの装着を怠った介護職員の過失責任は重く、また、このように明らかに危険な業務を放置した管理者の責任も同様に重いと判断され、被害者から刑事告訴されてしまったのです。被害者が刑事告訴に踏み切ったのは、職員と管理者の責任の他に「隠ぺいしようとした」という組織の責任を追及したかったのかもしれません。
    実際に施設の業務運営や設備環境などを、詳細にチェックしてみると常識では考えられないような危険が何の対応もなされず放置されていることが良くあります。特に入所施設は家族の目に触れない部分が多く、チェックが入りにくいので、外部の目で安全管理体制の点検をしない限り改善するのは難しいと思われます。
    ※刑法第211条:業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
    ■介護事故で職員が刑事告訴されたら
    職員が故意に安全ベルトを装着しなかったために、利用者が浴槽で溺れたのですから、過失が重いことは間違いありません。職員は介護福祉士という国家資格を持つ注意義務も高い者ですから、その責任が重いことは明白です。その上家族は「事故を隠ぺいする意図で経過観察したことが死亡という重大な結果を招いた」と考えていますから、被害者感情はピークに達して、「損害賠償だけでは許せない」と感じています。当然加害者である職員や施設を罰してやろう、という感情が湧いてきます。
     事故の発生状況から警察が事件性なしと判断すれば、加害者が刑事責任を問われることがありませんが、被害者は加害者に対する刑事罰を求めて、警察に対して刑事告訴を行うことができます。警察が告訴状を受理すれば、事件として捜査され加害者が刑事罰を受ける可能性があります。
     本事例では、警察が業務上過失致死の疑いで介入した段階で、被害者の遺族への対応を手厚く行うべきだったのです。具体的には、理事長などの地位の高い法人の経営者が直接何度も謝罪に足を運ぶこと、安全管理の手落ちを認めて公表し再発防止策を具体的に提示することなどです。そのような対応で実際には被害者は刑事告訴に踏み切ることを思いとどまるケースが多いのです。刑事告訴後であっても被害者への対応によっては告訴を取り下げるケースもありますから、まだ、手遅れではありません。経営者らは被害者遺族に対して誠心誠意の対応をすべきなのです。
     交通事故や労災事故などで過失の重い重大事故が発生すると、警察が事件性なしと判断しても、被害者感情を癒すことを重要視して、経営者自ら何度も弔問に訪れるのは被害者の刑事告訴を怖れるからです。介護事業を運営する法人の多くが経営者に当事者意識が乏しく、法人の致命傷につながりかねない危機への対応体制がありません。
    ■装着しにくい安全ベルトは製品欠陥
    最後に「肌が触れると傷ができるほど硬い材質で全ての利用者が装着を嫌がる」という安全ベルトも、大きな問題です。安全ベルトはリフト浴という介護機器が持つリスクを防止するために必要不可欠の安全装置です。入浴用の機器ですから素肌に直接触れることが前提の安全装置なのに、硬い素材で肌が傷ついてしまい装着しにくいのです。このことは、安全装置が機能しないことを意味していますから、製造物責任法の製品欠陥に該当します。ですから、本事例の損害賠償責任も最終的にはメーカーが負担することになるかもしれません。
     しかし、施設はこの事故はリフト浴の安全ベルトが原因として、被害者にメーカーに賠償請求するよう求めることはできません。施設は安全な機器を用いて安全なサービス提供をすべき契約上の債務を負っているのですから、「安全な性能の危機に買い替える」「機器の安全性に問題があればメーカーに改善させる」などの対応をしなければなりません。このような介護機器には安全性に関わる製品欠陥が大変多く見受けられ、施設が漫然と放置しているので、事故もたくさん起きています。介護機器メーカーも、「プロなんだから危険な製品も工夫して使用すべき」と改善しません。
     消費者庁などから、再三にわたって注意喚起をされているにもかかわらず、施設における介護機器の安全性に対する認識は全く向上せず、多くの機器が危険なまま使用されています。本事例の安全ベルトもメーカーに要求して改善させておけば、刑事告訴という職員個人が罰則を受ける事態には至らなか

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