投稿者: anzen-kaigo 一覧

  • 08/18
    2025
    2025.08.18
    10月安全な介護セミナー「効果があがるヒヤリハット活動11のポイント」ご案内

    「ヒヤリハット活動に取り組んでいるのに効果が上がらない」と悩んでいる施設・事業所がたくさんあります。ヒヤリハット活動はシートを書くだけでは事故は減りませんから、活動の進め方を見直さなければなりません。基本的なことから難易度の高い取り組みまで、11の事例の挙げてその改善策を解説いたします。≫パンフレットはこちらから 

  • 08/17
    2025
    2025.08.17
    9月事故事例検討会「排泄介助中センサーコールに対応したら便座から転落し重症」

    排泄介助中にトイレの前で待っている時間がもったいないので、他の用事をしてしまう職員は結構います。S君はBさんの排泄中にトイレの前で待っていたら、居室でセンサーコールが鳴ったので迷わず対応してしまいましたが、Bさんは便座から転落して重症に。あなたはセンサーコール対応を優先しますか?≫パンフレットはこちらから 

  • 08/17
    2025
    2025.08.17
    運営基準対応・オンライン法定職員研修「虐待防止編part1(9/25)」のご案内

    運営基準で義務化された法定職員研修の2025年度第4回目、「虐待防止編part1」をご案内します。セミナー録画と短時間動画が1カ月配信されるので、全職員の受講が可能です。また、理解度確認テスト付ですから、研修記録として保管できます。≫パンフレットはこちらから 

  • 08/02
    2025
    2025.08.02
    9月安全な介護塾「カスハラ対応失敗事例の原因分析と対策検討」

    カスハラ行為は暴力的行為や陰険な精神的攻撃から理不尽な要求まで多様ですし、カスハラ行為者も利用者や家族など様々です。当然対抗策も行為により相手により全て異なり一筋縄では行きません。本セミナーでは、カスハラ行為への対応の失敗事例から原因を分析し、対策を検討します。≫案内はこちらから ≫検討事例はこちらから

  • 08/01
    2025
    2025.08.01
    8月安全な介護にゅーす発行「酷暑期の大規模停電による施設利用者の熱中症対策」

    今年も危険な暑さが続いています。この酷暑の時期に震災が起きて長期に停電が起きたら、施設の入所者を熱中症から守れるでしょうか?あなたの施設の災害対策BCPには、酷暑期停電時の熱中症対策は載っていますか?≫読者登録はこちらから

  • 07/10
    2025
    2025.07.10
    「リスクマネジメント情報の広場」に記事を20件追加掲載!

    本ホームページの「リスクマネジメント情報の広場」の記事を20件追加しました。お勧め記事は「弟に会わせるなという身元保証人の要求に従ったら弟が現れトラブルに」「デイの送迎車が飛び出してきた子供をひき逃げして逮捕、なぜ?」などです。無料記事ですので、現場の事故防止トラブル防止にお役立てください。

  • 07/09
    2025
    2025.07.09
    救急搬送先の病院で「なぜ施設長が病院に来ていないのか」と家族が激怒

    《検討事例》
    Jさん(男性・95歳)は要介護5で自発動作が少ないほとんど寝たきりの利用者です。入浴介助は機械浴を使用して介護職員は二人一組で介助しています。ある時、利用者の身体をストレッチャーに移乗しようとして事故が発生しました。二人の職員は利用者の片側に立ち、利用者の身体の下に二人の手を入れて持ち上げ、「いちにのさん」と言ってストレッチャーに載せようとしました。ところが、二人のタイミングが合わずバランスを崩して利用者は浴室の床に転落してしまったのです。
    Jさんは転落する時に身体が反転し、左側頭部から左顔面上部を床に強打していました。Jさんは意識不明となり救急搬送され、救急車には事故に関わった介護職員が同乗しました。Jさんは生命に危険がある重篤な容態で、緊急手術となりました。手術中に駆けつけて来たJさんの息子さんに対して、搬送に同行した職員が、「本当に申し訳ありません、私達の不注意で事故を起こしてしまいました」と謝罪しました。
    「どうしてこんなことになったんだ」と尋ねる息子さんに対して、職員が「ストレッチャーに載せる時、“いちにのさん”で身体を持ち上げたら息が合わずに落としてしまったんです」と説明しました。すると息子さんは「ふさげるな! “いちにのさん”で持ち上げるなんて危ないに決まってるだろ!」と激高し、「こんなひどい事故起こしておいて施設長はどうしたんだ、来てないじゃないか」と施設長が来ていないことを問題にしてきました。
     すぐに施設長が駆けつけて来て何度も謝罪しましたが、息子さんの怒りは収まりません。その後治療の甲斐も無くJさんは亡くなり、葬儀に出席した施設長に対して「乱暴な介護をさせていた施設長の責任が重大だ、どのように責任をとるのか?」と、施設長に迫りました。Jさんの葬儀の後に、損害賠償金の支払いを申し出る施設長に対して、息子さんは「こんなひどい事故で父が亡くなり本当に悔しい。損害賠償だけでは承服できない」と話し、事故を起こした職員と施設長を業務上過失致死で警察に告発すると言われました。

    《解説》
    ■搬送先での事故状況の説明などの対応は相談員が適役
    このトラブルの最も大きな要因は、事故直後の家族に対する介護職員の説明が不適切だったことです。救急搬送されるような重大な事故で病院に駆けつけて来た家族は、ショックと不安でとても神経質になっています。このような場面での家族の対応は、極めて重要で家族の感情に配慮した適切な対応が必要になります。ところが、本事例では介護職員が救急搬送に同行してしまい、家族に配慮の足りない説明をしたことから、怒りを買ってしまいました。
     では、救急搬送のような重大な事故では、誰が救急搬送に同行し、誰が家族への説明を行えば良いのでしょうか?基本的には、救急搬送に同行するのは看護師の役割です。なぜなら、救急搬送された病院側では緊急処置や手術などで手一杯になり、家族へ配慮している余裕がありません。同行した看護師が病院から情報を引き出し、家族に分かりやすく説明するなどの配慮をすることで家族も安心します。
     また、搬送先の病院での事故に関する説明は、相談員が適役です。家族の感情に対する高度な配慮が求められる場面ですから、家族の性格などの家族情報を習熟し家族対応に慣れている相談員でなければ適切な説明は難しいでしょう。当然、平常時から相談員もオンコール当番制にして、緊急時に出勤ができるような態勢にしておかなければなりません。
     ちなみに「看護師が救急車に同乗する」と決めて、家族対応も看護師任せにしている施設もありますが、看護師が事故に関する家族説明が適切にできるかどうかは疑問があります。また、事故に関わった職員が救急搬送に同行すると、利用者が病院で死亡した場合に職員が精神的ショックを受けて、後に精神に悪影響が出る場合があるので配慮が必要です。

    ■被害者意識が強くなる事故では管理者が急行すべき
     さて、次のトラブル要因は家族がこだわった「施設長が病院に来ていない」ことです。本事例のような家族の被害者意識が極めて高くなるような事故では、施設の管理者が病院に急行していないことを家族からきつく咎められます。家族の到着に間に合わず「現在施設長も急いでこちらに向かっています」と説明できれば良いのですが、施設長が病院に急行するよう手配もされていないというのでは、家族は施設の誠意が著しく足りないと感じ施設管理者の責任感にも大きな疑問を持ちます。
     では、どのような事故でどのように施設長の病院に急行すれば良いのでしょうか?どんなルールを作っておけば、施設長が病院で家族に誠意ある対応をすることができるでしょうか?まず、家族の被害者意識が極めて高くなる事故とは、どんな事故なのかを決めておかなければなりません。Jさんの息子さんが「こんなひどい事故を起こしておいて」と言った、“ひどい事故”のことです。
     家族の被害者意識が高くなる事故の条件は次の2つです。
    ①職員のミスの度合いが重く施設の過失が大きい事故
    ②被害者の容態が重篤な事故(重大事故)
    ですから、これら2つの条件に当てはまるような事故が起きた時は、救急搬送先が決まった時点で、施設長の携帯電話に連絡を入れ救急搬送先に急行してもらうというルールにしておけばよいのです。施設長は施設管理者の責任として、事故の謝罪をていねいに行います。本事例でも、事故直後に施設長が病院に急行し、「このような大きなミスでお父様に重症を負わせたことについて、管理者としての大きな責任を感じています。大変申し訳ありません。お詫び申し上げます」と息子さんにていねいに謝罪していたら、家族の心情はどれくらい変わっていたでしょうか?

    ■二人でどのように介助すれば安全かを検討する
    息子さんが「乱暴な介護」とまで指摘した、移乗の介助方法について考えてみましょう。本事例では、二人で介助することが安全な方法だとして、機械浴の移乗介助は二人で行うようにマニュアル化されていました。ところが、「二人で介助する」「二人介助で行う」というマニュアルの文章は良く見かけますが、どのように二人で介助すれば良いかが具体的に書かれていないのです。「利用者の脇に職員が二人並んで、いちにのさんで4本の手で利用者を持ち上げる」という介助方法は、息子さんの目にもひどく乱暴で危険な介助方法であると映りました。
    職員が二人で介助すると本当に安全に介助できるのでしょうか?ただ、二人で介助すれば安全だというのは、介護施設の職員の思い込みで、逆に危険になるケースも多いのです。なぜなら、具体的な介助方法を検討せずに二人で介助すれば、連携がうまく取れず一人介助よりリスクが高くなるからです。本当に二人で安全に介助するためには、「一人が主体的な介助動作を行い、もう一人がこれを適切に補助する」という主従の連携でやらなければなりません。「二人で息を合わせて持ち上げる」では、息が合わなければ落としますし、物を持ち上げているようにしか見えません。
    介助方法は安全な介助方法であると同時に、安全でていねいな介助方法に見えることも大切なことです。時々、「介助が乱暴」と家族からクレームがあり調べてみると、安全に手際よくやっているのに介助の仕方が速いので乱暴に見えるというケースもあります。ですから、介助が難しいような場合は、慎重に安全な介助方法を検討した上で、家族に介助方法を見せて了解を取ることも考えた方が良いでしょう。
    ある重度で寝たきりの利用者は、骨が弱っていて移乗時の骨折リスクが高いことから、ベッドからリクライニング車椅子への移乗介助で、シート上に利用者を乗せて四隅を職員が持って身体を移す方法を家族に見せて了解を取りました。家族はテレビなどで病院に搬送されたストレッチャー上のケガ人を、ベッドに移す時シーツの四隅を持ち上げているのを見ていて、安全な方法だと考えたのでしょう。リスクの高い介助の場面では介助方法も家族に説明することが、トラブルの防止に役立つのです。

    ■過失の大きい事故では職員や管理者が刑事告発されることがある
     Jさんの息子さんは、「職員と施設長を業務上過失致死で警察に告発する」と言いました。職員と施設長個人の刑事責任を問うということなのですが、まず事故が起きた時の加害者の責任について整理しておきましょう。まず、最も多いケースは事業者(法人)が債務不履行で賠償責任を問われるケースです。通常事故が起きて、民事裁判で追及されるのが、入所契約上の安全配慮義務違反としての賠償責任です。法人はそのために賠償保険に加入していますので、通常保険金が支払われます。また、事故に関わった職員や管理者・経営者が個人で賠償責任が問われるケースも、無い訳ではありません。2008年9月には、訪問介護のヘルパーが誤えん死亡事故の過失で個人の賠償責任を認定する判決が下りています(名古屋地裁一宮支部)。
     では、事故に関わった職員や管理者が業務上過失致死で刑事責任を問われることはあるのでしょうか?過失が大きな事故では事故を起こした職員や管理者が刑事責任を問われることは珍しいことではありません。2001年には老健で入浴中に利用者が溺死した事故で、パートのヘルパー職員が業務上過失致死で書類送検されています。
     介護事故で刑事責任を問われやすいのは、看護師や介護福祉士などの国家資格を持っている職員です。国家資格者はその職務遂行において極めて高い注意義務を要求されていますので、法令違反や初歩的なミスで重大事故を起こすと、比較的容易に刑事責任を問われます。刑事告発は、警察自らが捜査を行い刑事告訴を行うことができますが、被害者などが捜査と刑事罰を要求して警察や検察庁に刑事告発をすることも可能です。
     本事例では「極めて危険な介助方法で死亡事故を起こした」として、Jさんの息子さんが警察や検察庁に刑事告発することは容易なことなのです。遺族が刑事告発すればこれが受理されて捜査が行われ、業務上過失致死で書類送検される可能性は高いでしょう。

  • 07/09
    2025
    2025.07.09
    デイの送迎車が追突され利用者が脳梗塞、なぜデイの責任が問われるのか?

    《検討事例》
    Hさん、(68歳男性)は、軽度の左半身麻痺で杖歩行の比較的元気なデイサービスの利用者です。ある8月の暑い朝、Hさんを居宅前で乗せて送迎車が発進しようとすると、“コツン”と小さな音がして軽く車に追突されてしまいました。追突した車両の運転手は謝罪し、送迎車に乗っていたHさんと運転手に「救急車を呼びましょうか?」と言いましたが、Hさんは「大丈夫だからいい」と断りました。送迎車のドライバーは、デイサービスに連絡を入れ「大したことはないので、現場検証が終わり次第Hさんをお連れする」と伝えました。Hさんは警察の現場検証が終わるまで30分以上送迎車内に留まり、珍しそうに車を出入りしては検証の様子を見て、その後も興奮してデイに着くまで話し続けていました。
    ところが、Hさんはデイサービス到着直後に悪心とめまいを訴え、血圧を測ると200-120(mmHg)と異常値です。続いて意識混濁が現れたため、看護師が病院に救急搬送しました。Hさんは高血圧の発作から脳梗塞を起こしており、2週間後に退院しその後もリハビリを続けましたが、歩行困難で車椅子全介助となってしまいました。その後Hさんの息子さんから連絡があり「加害者の保険会社から“追突事故と脳梗塞に因果関係はない。その後のデイの対応が問題なのではないか?”と言われた」と言うのです。デイサービスでは「追突事故の被害の責任がデイサービスにある訳がない」と責任を否定すると、息子さんが訴訟を起こしました。

    《解説》
    ■デイサービスの事故に対する責任を検証してみたら
    Hさんの脳梗塞による身体の障害に対する責任は誰にあるのでしょうか?追突した加害者は被害車両に乗っていた人の、事故後に起きた脳梗塞の責任まで負うべきなのか検証してみましょう。まず、Hさんは身体に何のショックも受けていませんから、衝突の力によってHさんの身体には何の作用も無かったことになります。つまり、この追突事故とHさんの脳梗塞には、「直接的な因果関係が無い」ことになります。直接の因果関係が無い損害でも、「追突にビックリして転倒した場合」など、因果関係が認められることもありますが例外的でしょう。事故で骨折し入院し肺炎で亡くなっても、死亡は事故の直接の損害とは通常認められないのです。
    また、加害者は被害者に対して救急車の要請を申し出ており、警察の届け出も行っていますから、事故発生時に被害者に対して行うべき道路交通法上の義務(事故発生時の救護措置)を全て果たしています。すると、加害者(実際には保険会社)の“事故と脳梗塞には因果関係が無い”という主張は正しいことになり、Hさんの脳梗塞の責任を追突事故の加害者(保険会社)に負わせることは、どうやら難しそうです。
     では、息子さんが言うように、Hさんの脳梗塞による損害に対してデイサービスの責任はあるのでしょうか?デイサービスの送迎業務中に起きた事故で利用者に損害が発生し、デイサービス側に過失があれば、デイサービスは債務不履行として安全配慮義務違反の責任を問われます。もし、追突事故が発生した時の送迎車の運転手のHさんへの対応で、安全配慮義務違反があればデイサービスの過失として、賠償責任が問われるのです。
    次のポイントで送迎車の運転手の対応の安全配慮義務についてチェックをしてみますが、デイサービスの管理者は「デイの責任もあるのでは?」と主張された時、専門家に相談するなどきちんと事故の責任を検証しなければなりません。契約に付随する安全配慮義務は広範で、しかも多くの疾患を持っているデイの利用者に対しては、健康管理上の配慮も重いのですから。

    ■Hさんの健康管理上に対するデイの安全配慮義務は重い
    次に事故発生時のHさんに対する送迎車運転手のデイサービスの安全配慮義務について、細かく検証してみましょう。デイサービスでは入所施設ほど厳密ではありませんが、ある程度の既往症や疾患などの健康状態の情報を把握し、レクリエーションや入浴など身体への負担がある場面では、基本的な健康チェックを行っています。
    このように、デイサービスでは入施設と異なり高度な医療的安全配慮は求められませんが、介護のプロとしての基本的な安全配慮が必要となります。ですから、老人会や趣味のサークルの管理者と同じレベルの安全配慮では困るのです。
    ではHさんの場合、デイサービスに求められる健康上の安全配慮義務はどのようなものでしょう?まず、Hさんは脳梗塞の既往症があり血栓予防薬を飲んでいますから、脱水や低カルシウム血症などには注意しなければなりませんし、打撲などの内出血でも注意が必要です。また、高血圧症もありますから、血圧上昇につながる激しい運動や高温の環境には注意が必要です。血圧降下剤として利尿剤も飲んでいることから、脱水には特に注意が必要でしょう。
    ところが、事故発生時には現場検証などが必要になり、Hさんも送迎車内で30分間待たされてしまいました。Hさんは高血圧症で多発性脳梗塞の既往症がありますから、事故現場の車内に30分以上も留め置かれて、車内から出たり入ったりすれば血圧上昇と脱水が起こるかもしれません。珍しい体験に興奮すれば血圧上昇に輪をかけます。
    このようなHさんの健康状態に配慮すれば、Hさんを目の前の居宅にいったん戻して涼しい場所で落ち着いてもらうこともできたはずですし、デイのスタッフを呼んでHさんだけ先にデイにお送りすることもできたはずです。もし、事故の現場検証で暑い現場に長時間留め置かれたことがHさんの脳梗塞発症の原因だとすれば、事故現場における運転手の判断は安全配慮義務を怠っていたとみなされても仕方ありません。
     
    ■どのようなアクシデントにどう対応するのか、具体的なルールが必要
    さて、本事例の場合運転手の事故現場でのHさんに対する配慮を欠いていることも問題ですが、そもそもこのような状況で運転手に全ての判断を委ねて良いのでしょうか?送迎車の運行中には様々なアクシデントが予期されます。運行中に利用者が体調急変を起こすかもしれませんし、軽い事故でも動転して持病の心臓病が悪化するかもしれません。もちろん対応する運転手の能力にもよりますが、最近では外注や嘱託の運転手など介護の知識の乏しい運転手が多く、正職員が運転しているケースは少ないのが実情です。
    このような介護の知識や利用者の疾患の情報を知らない運転手に対して、送迎業務中にアクシデントが発生した時、自らの判断で適切な対処を期待することに無理があるのです。多くのデイサービスでは、送迎中の予期せぬアクシデントが発生した時は、「デイに連絡を入れスタッフの指示に従う」と徹底しているから大丈夫、と言うかもしれません。
    しかし、運行中に最後列のシートの利用者の姿が見えなくなり、施設に到着した時はシートに横たわっていた、という事例もあります。施設に連絡すべきアクシデントが明確になっていませんから、運転手はアクシデントの発生に気付かないのです。これではデイに連絡を入れられません。また、運転手からアクシデント発生の連絡が入っても、対応したデイのスタッフが自らの判断で適切な対応ができる保証がありません。このように、「送迎時のアクシデントへ対応方法」が場当たり的で、基本的なルールが無いことが、本事例のようなトラブルの大きな原因となっているのです。

  • 07/09
    2025
    2025.07.09
    ヘルパーが洗濯機に給水中ホースが外れ漏水事故が発生し階下に大被害

    《検討事例》
    Tさんは(80歳女性)は築40年の市営住宅に独居している要介護1の利用者です。5年前に夫が亡くなり、認知症も無く生活はほぼ自立していますが、膝関節に持病があり訪問介護(生活援助)を利用しています。近所に住む一人娘が居ますが、あまり訪ねて来ないため家電製品のトラブルなどで時々困っています。
    ある時ヘルパーがTさんの生活援助中に、漏水事故を起こし階下の居室に大きな損害を与えてしまいました。ヘルパーが居間で掃除機をかけている時、脱衣所に置いていた洗濯機に差し込んであった給水のホースが外れて床に落ち、流れ出た水が階下のMさん宅まで漏水したのです。Mさん(一人暮らしの女性)が怒鳴り込んできて初めて漏水に気付きましたが、階下の部屋は全室に天井から汚水が降り注いでいました。
    ヘルパーはすぐ事務所に連絡し、所長とサービス提供責任者が謝罪に伺いました。階下のMさんの話によれば、3年前に別のヘルパーが同様の小さな漏水事故を起こした時、責任者が来て謝罪し「今後はずっとヘルパーが洗濯機についている」という約束で穏便に済ませ、補償を求めなかったそうです。
    所長はすぐに保険会社に事故の連絡を入れ、翌々日には調査人が被害を調査すると言ってきたので、その旨をMさんの娘さんに伝えました。所長が職員やヘルパーにお願いして、水濡れした衣服や布団をクリーニング店に運ぶなど、後始末の手伝いを職員総出で行いました。
    ところが、翌々日になってMさんが事業所にやって来て「保険の調査人という人が来て写真を撮って、被害のあった物品を書き出すリストを置いて行った。対応が悪すぎる。どうやってこんな汚い部屋で暮らせばいいの。あなたの会社と保険会社を訴えてやる」とすごい剣幕でまくしたてました。

    《解説》
    ■認知症がなければ居宅の設備の不備による事故は利用者の責任になる
    訪問介護の訪問先が集合住宅の場合、時々本事例のような漏水事故が起きます。本事例のトラブルの原因を検証する前に、確認しておくべきことがあります。この漏水事故の賠償責任は本来誰が負うべきものなのでしょうか?この漏水事故は一見ヘルパーの過失によって起きた事故のように思われますが、洗濯機が水漏れを起こさないように適切に管理する責任は、洗濯機の所有者である利用者にあります(認知症がありませんから)。ですから、ヘルパーが洗濯中の水漏れ事故であっても、ヘルパーの使用方法に落ち度がなければ本来この事故の責任は利用者が負担すべきなのです。
     ところが、話をややこしくしてしまったのは、前管理者の対応です。3年前の小さな漏水事故で「洗濯中は常時ヘルパーが洗濯機についている」などというその場逃れの対応をしてしまいました。ヘルパーが生活援助時に洗濯機の脇で見張っていたのでは仕事になりませんから、実際にはこの約束は履行不可能です。しかし、この約束は事業所と被害者が交わした示談条件とみなされますから、これを履行しなければ債務不履行となってしまいます。本事例ではヘルパーが洗濯機についていなかったのですから、債務不履行として賠償責任が発生してしまうのです。訪問介護の事故の多くが、利用者宅の設備や建物の瑕疵が原因で起こります(古い建物が多い)。たとえ小さな事故でも本来誰の管理責任なのかということをハッキリさせておかなければいけません。

    ■被害者の健康被害の防止の対応が最優先であった
     私たちが自動車事故を起こすと、被害者の示談を全て保険会社が代行してくれます。しかし、訪問介護事業者が加入している、業務中の事故の賠償責任保険は示談代行付ではありません。ですから、事故が起これば事業者は自力で示談交渉を行って解決し、支払った損害賠償金を損害保険会社が補てんすることになります。介護施設や事業者はこの保険の仕組をしっかり理解しておかなければなりません。
    この事故を大きなトラブルに発展させたのは、所長が「保険会社に報告すれば適切に対応してくれるだろう」と誤解をしたことです。前述のように保険会社は被害者への示談交渉の援助はしてくれませんから、事業所が自身で判断して最も適切な被害者対応を行わなければならなかったのです。この事故の場合、大量の漏水によって天井裏から汚水が降り、部屋全体が水浸しになるような状況だったのですから、衛生的に大きな問題があり住人の健康被害の防止に対してまず対応しなくてはなりません。
     具体的に言えば、ルームクリーニングを手配して衛生上の問題がなくなるまで、被害者家族はホテルなどで暮らしてもらうようにしなければなりません。また、保険会社の判断にもよりますが、家財道具が全て汚損したのであれば家財が全損扱いになる可能性があります。この点も調査人ではなく保険会社に直接確認しなければなりません。たとえ物損事故であっても、被害者への対応は事業所が適切に行わなければなりません。
     
     ■居宅の環境リスクを改善するのはケアマネジャーと家族である
    さて、このような居宅サービスでの事故のトラブルを防止するために必要なもう一つの視点は、ケアマネジャーとの連携です。この利用者は近所に娘が住んでいる独居の利用者ですから、事業者がどんなに奮闘しても、利用者の生活上のリスクへは十分な対応はできません。必ず家族の援助が必要となりますし、家族と事業者の協力関係をコーディネートして、利用者の生活を支えるのもケアマネジャーの大きな役割です。
    ケアマネジャーは、居宅サービスの事業者がサービス提供を開始する時に、安全なサービス提供ができる環境かどうか居宅内をチェックし、もし危険な環境があれば家族に改善を依頼したり、ケアマネジャー自身で住宅改修の手配を行わなければなりません。どのケアマネジャーも居宅の環境リスクに無関心であり、居宅サービス事業者も現状の環境のままサービス提供に入ってしまいます。そして事故が起きればヘルパーの不注意などとして、事業者の過失となってしまうのです。
    居宅のサービス提供環境を改善できるのは、ケアマネジャーと家族だけで事業者はできません。ケアマネジャーにもっと居宅の環境リスクへの対応姿勢を持ってもらいたいと思います。

  • 07/09
    2025
    2025.07.09
    兄の許可で施設の広報誌に利用者の写真を掲載し弟とトラブルに

    《検討事例》
    特別養護老人ホームS苑では、「S苑便り」という施設の広報誌を月1回発行しています。できるだけ利用者の生活の様子が伝わるように、写真なども掲載し生き生きと生活する利用者の情報が伝わるように努めています。また、「地域に開かれた施設を目指す」という施設の方針から、自治会や町会、在宅支援センター、地域包括支援センター、在宅ケアマネ、福祉センターなどにも送付しています。もちろん、利用者の写真や氏名の掲載については、本人と家族の了解を得ることも忘れないようにしています。
    ある月の「S苑便り」で、利用者の「お気に入り」を紹介することを企画し、Uさんが大切にしている赤ちゃんの人形を取り上げ、人形を抱いて微笑んでいるUさんの写真を掲載することになりました。もちろん、相談員がUさんのキーパーソンである長男に電話で企画の内容を話し、Uさんの写真の掲載許可を得ることも忘れませんでした。
    ところが、翌月S苑便りが発行されると、Uさんの次男から次のようなクレームがありました。「近くの福祉センターに用事があって言ったら、パンフレット立てにS苑便りが置いてあって、母の写真が大写しで載っていた。しかも、赤ちゃんの人形を抱いて薄笑いを浮かべていて、あれでは認知症だと分かってしまう。一体誰の許可を得て、掲載しているのか?」と。施設長は、「掲載の許可はキーパーソンのご長男にいただいているので問題ない」と、説明しました。
    ところが、その後キーパーソンの長男から次のような強いクレームがありました。「弟から母の写真について文句を言われた。『母の写真を掲載するから了解して欲しい』と言われたが、赤ちゃんの人形を抱いている大写りの写真だとは思わなかった。配慮が足りない。それにS苑便りが福祉センターのパンフレット立てに入っているとは思っていなかった。そんな誰の目にも触れるような場所に置くのは、ちょっと常識に欠けるのではないか?」
    施設長は、「今後Uさんの写真は掲載しない、福祉センターにはパンフレット立てに置かないように注意する」と約束して、長男の納得を得ました。

    《解説》
    ■広報誌の配布先も説明しなければ利用者の個人情報は掲載できない
    本事例がトラブルとなった原因は、広報誌掲載への家族の了解の取り方にあります。施設長は、「掲載の許可はキーパーソンのご長男にいただいているので問題ない」と主張していますが、相談員が電話で「広報誌に掲載させて欲しい」と話し家族が「いいですよ」と言っただけで、本当に了解を得たことになるのでしょうか?
     特養入居者の個人情報は身体機能や知的能力にハンディがあるという人の情報ですから、センシティブ情報と言われる極めてプライバシー性の高い情報です。このような重要な個人情報を紙媒体で多くの人に伝えるのが広報誌ですから、その媒体への掲載には細心の注意を払わなくてはなりません。本事例の場合、少し配慮が欠けていると言わざるを得ないでしょう。
     まず、どのような文脈でどのような写真が掲載されるのかを、家族に確認してもらっていません。ですから、「あんな写真が載れば認知症だと分かってしまう」と家族からのクレームにつながってしまったのです。また、この広報誌がどこに配布されるのかを全く説明していませんから、「福祉センターのパンフレット立てに置いてあったことを咎められてしまったのです。広報誌が利用者の家族や職員など限られた人しか配布されないケースと、地域に広く配布されるケースでは、家族の判断は大きく異なるでしょう。
     このように広報誌の掲載については、必ず次の2点を確認しなければなりません。
    ①ゲラの段階で実際の誌面を見せて了解を得る
    ②広報誌の配布先も説明して了解を得る
    施設が利用者の生き生きと生活する様子を広報したい気持ちはわかりますが、「ホームページに写真を載せる」「外出行事の写真を掲示する」「利用者の作品を展示する」など、利用者の写真や氏名を公表する時には、誰に個人情報が伝わるのかをきちんと確認し家族に説明する必要があるのです。

    ■利用者の個人情報の取扱いルールを説明し家族の了解を得る 
    本事例のような、介護保険利用者の個人情報を巡るトラブルは、近年増加傾向にあります。その理由は、個人情報保護法が施行され利用者の家族が個人情報に対して敏感に反応するようになったことも一因ですが、施設側で利用者の個人情報の取扱いに対するルールが明確になっていないことが、大きな要因になっているのです。
    例えば、利用者の描いた絵(作者の氏名が付された)を特養の1階のエントランスに掲示したところ、家族から「こんな人目に触れるところに掲示するな」とお叱りを受けました。この特養は、1階は事務所・厨房・デイがあり、2階から5階が居室のスペースになっているのです。つまり、1階は不特定多数の人が出入りするパブリックスペースであり、2階以上が居室だけのプライバシースペースですから、掲示するのであれば利用者の居室のあるフロアに限るべきなのです。
    このような利用者の個人情報を巡るトラブルを避けるためには、家族の心情に配慮した個人情報の取扱いルールを作り、これを家族に説明して同意を得ておかなければならないのです。ただし、全ての家族に個別に同意を求めることは難しいので、通常は「黙示の同意」という方法を使います。施設側でルールを作ってこれを家族に説明して「施設としてはこのルールで取扱いますがご了解いただけない方は申し出ていただければ個別に配慮します」という同意取り付けの方法です。

    ■利用者の個人情報の取扱いルールは様々な場面を想定する
    では、どのような個人情報の取扱いに対してどのようなルールを作れば良いのか、トラブル事例を参考に例を挙げて考えてみましょう。
    ①従来通り受付の1冊の面会簿に面会者の氏名を記入してもらっていたら「これでは、どの利用者に誰が面会に来たのか一目で分かってしまう」とクレームになった。
    ・面会簿は単票形式(面会者一人が1枚記入)か、利用者別のファイル方式に変える。
    ②『昔の知り合い』と名乗る人からの電話の問い合わせに、利用者の様子を詳しく伝えたら家族からのクレームになった。
    ・電話では相手の確認が取れないので、原則利用者についての情報を伝えず、電話があったことを家族に知らせる。ただし、キーパーソンや近親者からの緊急の用件にはお答えする。
    ③複合施設の廊下にデイサービスが花見の写真を掲示したら、家族からクレームがあった
    ・複合施設の廊下は各施設の共有のパブリックスペースですから、デイサービスの利用者の個人情報を掲示してはいけません。デイサービス内部の掲示板に掲示すべきです。
    ④知的障害の施設のホームページに利用者の写真をアップして家族のクレームとなった
    ・インターネットにアップされた情報は、全世界のどこからでもアクセスできます。つまり、個人情報の配信先は紙媒体などとは比較になりませんから、原則アップしないというルールが適切でしょう。
     
    このような個人情報の取扱いルールを作る時に留意したいのは、知的なハンディを持つ利用者の個人情報の取扱いです。知的障がい者や認知症の利用者の個人情報は、公開もしくは流出すれば即人権侵害につながる超センシティブ情報ですから、公開不可というルールにした方が安心です。
     また最近、施設の新入職員が利用者の顔写真を「写メして」SNSの写真投稿サイトに投稿して、訴訟寸前のトラブルに発展した事例もありますので、個人情報の取扱いについて職員研修の徹底を図ることをお勧めします。

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