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投稿者: anzen-kaigo 一覧
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20252025.10.14- 新作動画「接遇が短期間で向上する・敬語トレーニング5分間動画」のご案内
この動画は1週間に1つの敬語を学び声に出して練習することで、20週で20種類の敬語をマスターするものです。接遇態度訓練と異なり、敬語はセルフトレーニングによって短期間で上達することができますから、全体の接遇向上に役立ちます。管理者や役職者でも完璧に敬語を操れる人はいませんから、上司も部下も一緒に取り組んでみては?施設事業所は6カ月で配信料は11,000円。≫パンフレットはこちら ≫YouTube試聴版はこちら
- 10/11
20252025.10.11- 新作動画「事故発生時の過失チェックの知識(チェックマニュアル付)」のご案内
事故が起きた時、過失がある事故を「過失が無い」と説明したら家族トラブルになり最悪訴訟になります。逆に過失が無いのにあると認めて賠償したら保険金が支払われません。過失判断は施設管理者の必須の知識なのです。事故が起きたら過失チェックマニュアルで確かめてください。≫パンフレットはこちら ≫抜粋版視聴はこちら
- 10/03
20252025.10.03- 安全な介護塾「事例に学ぶ居宅サービスのセクハラ・カスハラ対策」のご案内
顧客からのセクハラ対策とカスハラ対策を比べた時、事業者の責任はどちらが重いと思いますか?正解はセクハラ対策、なぜなら顧客からのセクハラはセクハラ防止法によって、事業者の防止措置が義務化されているからです。利用者・家族からのセクハラ・カスハラへの具体的対抗措置を検討します。≫パンフレットはこちら ≫検討事例はこちら
- 10/02
20252025.10.02- 「介護事故対策マネジャー養成講座」11月開講のご案内
本講座は施設・事業所の事故防止活動を指導できる人材を養成する専門講座です。本講座に合格するとリスクマネジメント情報室の永久無料会員になり、安全な介護塾も無料で受講できます。オンライン講義+14本の動画+事例検討研修というハードな内容ですが、介護リスクマネジャーの専門知識を完璧に得ることができます。≫11月開講のご案内 ≫資格講座のご案内
- 10/01
20252025.10.01- 安全な介護にゅーす10月号「送迎車発進時に車椅子ごと転倒、固定が外れた?」
車椅子の固定装置のスイッチに職員の足が触れて、スイッチがオフになりフックが外れてしまったようです。この事故は職員のミスが原因なのでしょうか?送迎車の車椅子固定の事故を巡って、消費者庁の事故調査も始まりました。みなさまの施設でももう一度、正しい車椅子固定の方法について確認してみては?≫読者登録はこちらから
- 09/29
20252025.09.29- 10月事故事例検討会「利用者を間違えて食事形態の異なる食事を提供し誤嚥死亡」
利用者の名前を間違えて(人違いをして)誤薬事故につながることは良くありますが、誤嚥事故につながったことはあまりありません。しかし、食事形態が異なる嚥下機能が低下した人に、普通食を提供すれば誤嚥事故につながる可能性は高いのです。ショートステイやデイサービスで利用者を間違わずにケアをすることは、かなり難しく工夫も必要です。対策を考えましょう。≫案内はこちらから
- 09/16
20252025.09.16- 「介護現場実践シリーズ①~③」安全な介護にゅーす読者向け無料配信のご案内
ゅーす読者向けに、弊社オリジナルショート動画「介護現場実践シリーズ①~③」を10月1日から末日まで無料で配信します。無料配信する動画は「移乗介助中の転倒事故の防止対策」「見守り中の転倒事故の防止対策」「自立歩行中の転倒事故の防止対策」の3本です。≫ショート動画見本はこちらから ≫安全な介護にゅーす読者登録はこちらから
- 09/14
20252025.09.14- 誤嚥死亡事故で事故の調査報告書を提出しろと要求する医師の息子
《検討事例》
Mさん(78歳女性・要介護4)は軽度の認知症がある、特別養護老人ホームの入所者です。構音障害と強い右麻痺があり食事は全介助ですが、嚥下機能の障害はなく食事も普通食です。食事中に時々むせることがありますが、誤嚥のリスクはありません。
ある日夕食時に介護職員が食事介助をしていると、急にむせ始めました。介護職員は食事介助を止めて軽く背を叩いてむせが収まるのを待ちましたが、急に「ヒー」という高い呼吸音が聞こえ、むせが止まりました。介護職員は、誤嚥と判断してMさんを前かがみにしてタッピングを行いました。しばらくタッピングを続けましたが、チアノーゼに気づいて、看護師を呼び吸引を施行しました。少量の食べ物が吸引されましたが、呼吸は回復しません。看護師は吸引を諦め救急車を要請し、心肺蘇生術を施し続けましたが、救急搬送後に病院で死亡が確認されました。
医師である息子さんが、誤嚥事故の調査報告書を出して欲しいと言ってきたので、施設では食事介助の記録や誤嚥発生時の対応記録を付して、次のような内容で報告しました。
・Mさんは、嚥下機能に障害は無く食事形態も普通食である。
・過去に誤嚥の兆候が見られたことも無く、誤嚥の危険が高い利用者とは言えない。
・よってMさんは誤嚥防止の特別な配慮は必要なく、誤嚥事故は予測不可能であった。
息子さんは、「誤嚥リスクの評価や誤嚥の原因などの検証が不十分であり、誤嚥発生時の対応にも問題がある」と言ってきました。
■Mさんの誤嚥リスクの評価は正しいか?
施設側では、「嚥下機能障害が無く普通食で誤嚥の兆候は無かったので、Mさんは誤嚥のリスクが高かったとは言えない」と報告しましたが、息子さんは納得しませんでした。施設が主張するように、嚥下機能に障害が無ければ、誤嚥のリスクは低いのでしょうか?施設の誤嚥リスクの評価についてチェックしてみましょう。
以前は、「誤嚥事故の原因は嚥下機能障害である」と言われていましたが、最近では「誤嚥事故には嚥下機能だけでなく、咀嚼や食塊形成など含めた摂食嚥下機能全てが関わっている」と言われるようになりました。ですから、Mさんの誤嚥リスクを評価するには、摂食嚥下機能全般に支障がないかを調べなければなりませんでした。
例えば、Mさんには構音障害と強い右麻痺がありますから、口腔内の働きに障害がある可能性があり、咀嚼→食塊形成→食べ物の送り込みがうまく行かないかもしれません。また、服薬によって発生する摂食嚥下機能低下など誤嚥リスクは大変多彩です。抗精神病薬や抗認知症薬が摂食嚥下機能に悪影響を与えることは広く知られていますが、その他にも誤嚥リスクを高める服薬は多いので注意が必要です。
例えば、利尿剤、三環系抗うつ薬、交感神経遮断薬、抗ヒスタミン剤、抗精神病薬などは、口腔内を乾燥させる副作用があり、咀嚼や食塊形成、咽頭への送り込みなど口腔機能が低下します。また、パーキンソン病薬は不随意運動により食塊形成やえん下機能に悪影響を与えることがありますし、抗コリン剤、三環系抗うつ薬、Ca拮抗薬は、咽頭筋の働きが低下し、えん下反射に悪影響を与えます。
当然、誤嚥リスクを正しく評価した上で、これらに見合った食材や食事形態の選択をしなくてはなりませんから、「嚥下機能に障害がないので普通食」という調査報告では、誤嚥リスクの評価は不十分と見られてしまいます。
■誤嚥事故の調査報告書はどのように作るべきか?
次に、摂食嚥下機能の評価を含めた、誤嚥事故の原因の調査項目を検証してみましょう。誤嚥事故など事故の調査報告書を要求された場合は、事故原因を調査し過失がなかったかどうかを検証して報告しなければなりません。ここでは、誤嚥事故が発生した時の過失のチェック項目をご紹介します。
・摂食えん下機能を正しく評価していたか?
入所時にSTによる改訂水飲みテストなどを実施していれば、その記録を提出します。
・服薬によるえん下機能の影響をチェックしていたか?
一般的な服薬による誤嚥リスクについて検証します。薬剤を処方した医師による意見が添付されていると効果的です。
・摂食えん下機能に合った食材や食事形態を選択していたか?
現在ではソフト食・軟采食などの食事形態が主流ですから、キザミ・ミジンなど不適切な食事形態がないかチェックしましょう。
・認知症固有の誤嚥の危険に対して配慮をしていたか?
認知機能の低下によって危険な食べ方(早食い・詰め込み・丸呑み)をする利用者に対しては、自力摂取でも見守りが必要になります。
・誤嚥を防ぐ正しい食事姿勢への配慮をしていたか?
食事に適した前かがみ姿勢で食事ができるように配慮することが大切です。特に車椅子でのズッコケ座りは食べ物が気管に混入するので危険です。
・食前に口腔機能を円滑にするための配慮をしていたか?
覚醒を確認し水分摂取で口腔内を潤してから、食事介助を始めなければなりません。
・食事を急がせないよう時間的余裕の配慮をしていたか?
口腔内の食べ物を飲み込んでから次の一口を口元に運ばなければなりません。
・嘔吐物を誤嚥しないよう体調不良に配慮していたか?
食事中の嘔吐は嘔吐物の誤嚥につながりますから、体調チェックを欠かさずに。
このように、誤嚥を防止するためのチェック項目は実に多彩であり、誤嚥事故発生時にはこれらの防止対策が徹底できていたかを調査しなければなりません。
■誤嚥事故発生時の対処ミスがなかったか?
誤嚥事故は、その発生を防止する対策も重要ですが、誤嚥発生時の対処にミスがなかったかどうかは、事故後の争いでは大きな問題なります。誤嚥死亡事故の裁判では、誤嚥発生の過失と共に発生時の対処ミスが過失として大きな争点になっているからです。誤嚥発生時の対処の過失について、参考になる判例があります。
平成12年2月23日横浜地方裁判所川崎支部の誤嚥死亡事故訴訟の判決は次のような内容でした。「利用者は飲み込みが悪かったのであるから、食事後の異変を誤嚥と気付き対処すべきところ、15分後に救急車を呼ぶまで吸引などの救命措置をしなかった点に適切な処置を怠った過失が認められる。」と。この判決は「救命処置を行わなかったことが過失である」と解釈する人もいますが、救急車の要請が遅れたことも大きな過失です。人は呼吸が停止すると15分~20分程度で絶命します。救急車は到着に最低でも6分(都市部)を要しますから、15分で要請すれば救急車の到着は呼吸停止から21分経過しており、間違いなく絶命しています。つまり、救急車の要請時間は誤嚥発生時の対応の最も大きなポイントなのです。
本事例の誤嚥事故の対応から、救急車を要請した時間を検証してみましょう。誤嚥発生からタッピング施行まで2分かかり、タッピングを3分間施行したとします。次に吸引の要請から吸引開始までに3分、吸引の施行に3分かかり、119番通報したとすれば、救急車の要請までに12分を要します。救急車が6分後に到着すれば、呼吸停止から救急車の到着まで16分経過していますから絶命しています。救命を最優先すれば「誤嚥の発生に気付いたら看護師に吸引の要請を行い、看護師が吸引を開始するまでタッピングやハイムリックを施行する。看護師は吸引を開始する時に救急車の要請を行い救急車到着まで吸引を施行する」という手順になります。
- 09/14
20252025.09.14- 「誤薬が多すぎるから原因を分析としろ」と本部から指示され、分析してみたが何も分からない
《検討事例》
特別養護老人ホームのショートステイでまた誤薬事故が起きました。採用になってから2カ月しか経っていない職員が、認知症の利用者に他の利用者の薬を飲ませてしまったのです。業務に慣れていない職員のミスではありますが、今月3回目の誤薬事故ですから、施設長も内心穏やかではありません。誤薬した職員はマニュアル通りに、利用者の氏名を声に出して読み上げ他の職員と二人で確認しましたが、それでも事故を防げませんでした。職員は施設長に事故報告書を提出して「忙しかったので確認が疎かになってしまった。今後はもっと落ち着いて確認する」と、再発防止策を説明しました。施設長は「確認する前に深呼吸して落ち着くように」と、確認方法をアドバイスしましたが、翌月同じ職員がまた誤薬してしまいました。
誤薬事故が続くと、今度は法人本部のリスクマネジメント委員会が黙っていません。事故原因を分析して防止対策を見直すようにと指示してきました。施設長は「原因は職員の不注意に決まっているじゃないか」と思いましたが、言われたとおりに過去1年間の誤薬の事故報告書を調べて、原因を一覧表にしてみました(下表)。すると思った通り、食事の介助などで注意が散漫になっていることが主な原因と判明しました。食事が終わった利用者から随時服薬するのでは、服薬時の注意が散漫になると考えた施設長は、翌月から一斉服薬に変更するようショートの主任に指示しました。
【誤薬事故の原因】
「注意が散漫だった」 5件
「与薬に集中していなかった」 4件
「ほかのことに気を取られていた」 4件
「時間が迫っていて急いだから」 5件
「忙しかったから」 2件
「同じ苗字だったから」 2件
《解説》
■職員の個人的な原因を調べても意味は無い
誤薬事故の防止対策を検討する前に、基本的なことを確認しておきましょう。そもそも、誤薬事故とはどんな事故なのでしょうか?「誤った薬を服薬する」「誤った方法で服薬する」などの事故を言いますが、2種類に大別されます。自分の薬を飲み間違える「飲み間違い誤薬」と他人の薬を飲んでしまう「取り違え誤薬」です。通常後者を誤薬事故と呼んでいますが、「飲み忘れ」「服薬量誤り」などの飲み間違い誤薬も厳密に言えば誤薬事故となりますが、飲み間違い誤薬は大きなリスクではありませんので、本稿でも後者の取り違え誤薬を取り上げます。
さて、施設長は本部からの指示でしぶしぶ誤薬の原因分析を行いましたが、結局事故報告書の事故原因欄に書かれたミスの主観的要因を挙げただけでした。もともと誤薬事故は「職員のミスが原因」という強い思い込みがあるため、あえて原因分析と言われるとどのような心理的状態で誤薬したのかという意味のない原因分析になってしまいます。
実は誤薬の原因分析で大切なことは、「何を間違えたのか?」という、間違え方の分析なのです。まず服用する薬を間違える「取り違え誤薬」は2つの間違え方があり、どちらが多いのかを分析しないと効果的な防止対策にはつながりません。本事例の場合“何を”間違えたのでしょう。
利用者を取り違えたのでしょうか?それとも薬を取り違えたのでしょうか?AさんをBさんだと勘違いしてBさんの薬を飲ませるのが利用者の取り違えであり、Aさんの薬だと思ってBさんの薬を取り上げてしまうのが薬の取り違えです。前者の間違いが多ければ、本人確認手順を見直さなければなりませんし、後者の間違いが多ければ薬ボックスや薬袋の氏名確認の手順を工夫しなくてはなりません。このように分析してみると、ショートステイの誤薬は利用者の取り違えが多いことが分かりますから、本人確認の手順を見直すことが対策につながると分かるのです。
■服薬前の確認手順だけでは誤薬は防止できない
次に、誤薬の防止対策を考える時、2つの確認手順をマニュアル化しなければなりません。1つは、ミスの発生を防止するための確認手順です。食事の介助から服薬介助に至るプロセスの中で、薬の取り違え防止のための確認手順と利用者の取り違えを防止するための確認手順をどの場面でどのようにして行えば良いかを考えます。2つ目は、服薬直前の薬と本人の確認手順です。これはミスが発生た場合に、ミスを発見する手順なのです。本事例の場合、ミスを発見する確認手順しかないことになるのです。
例えば、居室から山田さんを食事の席に誘導しようとして、間違えて山野さんを連れてきたらどうでしょうか?当然山野さんに山田さんの食膳を配置した上に、山田さんの薬を飲ませてしまいますから、誤配・誤食事故と誤薬事故が同時起きることになります。すると、利用者を食事席に誘導する時点の本人確認の手順を考えなければなりません。
また、お薬ボックスから山田さんの薬をピックアップしようとして、お薬ボックスの名前を見間違えて、山野さんの薬を取り上げてしまうこともあります。この場面では、山田さんの薬を確実にピックアップするよう、利用者の氏名を確認する手順の工夫が必要になります。このように、ミスが発生しやすい場面に有効な確認手順を作ることで、ミスの発生を抑制する対策を講じることができます。
■氏名を読み上げて本人確認ができるか?
ミスが発生しやすい場面に、ミスの発生を防止する確認手順を作っても、それでもミスは起こりますのから、服薬直前にミスを発見するチェックの仕組が必要になります。本事例の場合「本人の氏名をフルネームで読み上げ、職員2名で確認する」というのが、決められた手順です。実はどの施設のマニュアルにも、同じような本人確認手順が載っていますが、氏名をフルネームで読み上げることが本人確認の方法として効果的な方法なのでしょうか?
職員が2人とも目の前にいる山田さんを山野さんだと思い込んでいれば間違いに気付きませんし、利用者に聞いても認知症があれば自分の氏名の間違いは指摘してくれません。私たちは、役所や銀行で本人確認をされる時、必ず「免許証を拝見します」と言われます。顔写真で本人を確認する方法が、最も簡便で最も効果的なのです。
施設もこの方法を採用すれば間違いは半減するのです。具体的には、利用者の顔写真と薬の写真を載せた食札(お薬確認シート)を作ります。この食札をお盆に載せて薬と一緒に本人の前に持って行き、「山田さん、お薬の時間です。山田さんのお薬に間違いありませんか?」と確認しながら、顔写真と利用者の顔を見比べるのです。こうすることで、利用者の取り違えも薬の取り違えもほとんど水際で防げるのです。不思議なことに人の目は映像化されると容易に違いを認識できるのです。「見える化」なんていう言葉が流行りましたが、実はビジュアルで捉えることは効果的なのです。
最近は、調剤薬局が利用者ごとに薬を一包化してくれるので、以前に比べて薬の間違いが少なくなりました。施設職員は調剤薬局が一包化した薬ほとんど確認していませんが、ある時お薬カードの写真と薬が異なることに気付きました。調剤薬局も薬を間違うことがあるのですから、確認を怠ってはいけません。
- 09/14
20252025.09.14- 送迎車の車椅子固定ミスで転倒事故?運転手は「確かに固定したはず!」
《検討事例》
Sデイサービスでは、車椅子を搭載できる大型のワンボックス車を送迎車として使用しています。ある日の朝のお迎えの送迎時に、いつものように車椅子の利用者を送迎車に載せて、車を発進させました。すると突然利用者の乗った車椅子が後ろへひっくり返りそうになりました。幸い車椅子のすぐ後ろに、他の利用者の移動介助に使用する車椅子を畳んで置いてあったため、利用者にはケガはありませんでした。しかし、利用者から「怖い思いをした」とクレームがあり、所長は「運転手の車椅子の固定を忘れたのではないか」と咎めました。運転手は「確かに固定したつもりだったが」と自信なさげに答え、所長は朝礼で「車椅子を固定した時には声に出して確認すること」と、運転手と職員に指導をしました。
ところがその1か月後、今度はお送りの送迎時にデイの職員が車椅子を固定した後に、やはり発車する時車椅子が後方に転倒して、利用者は後頭部を強打して意識不明となる事故が起きました。所長は「あれほど車椅子の固定確認を行うように徹底したのに」と憤慨しました。しかし、車椅子を固定した職員は、「車椅子の固定ワイアーのフックを車椅子に引っ掛けて、スイッチを入れウインチがワイアーを引いて車椅子が固定されるのを確認した」と反論しました。しかし所長は「フックをしっかり引っかけていれば外れることは無いのだから、職員のミスに変わりはない」と、今度は職員の固定作業の操作ミスであると決めつけます。1か月後、事故の本当の原因が判明しました。車椅子固定装置のスイッチがむき出しになっているために、固定した後にスイッチに何かが(誰かが)触れて、スイッチが解除になってしまうことが分かったのです。
《解説》
■原因は運転手のミスと決めつけ調査をしなかった
本事例では、最初の事故が起きた時に「原因は職員が車椅子の固定を忘れたこと」と決めつけて、他の原因を検証しようとしなかったので、「声に出して確認する」という見当違いな対策になり、重傷事故につながってしまいました。最初の事故の時に、職員の車椅子の固定忘れ以外にも事故の原因についても検証していたら、2度目の重傷事故は防げたかもしれません。
このような、職員が関わる作業などで事故が起こると、すぐに職員のミスが原因と決めつけて職員に注意を促して済ましてしまいますが、実は後から装置の誤作動などメカニカルな原因と判明することが良くあります。ですから、本事例のようなケースでも、職員のミスとメカニカルな原因の2つの側面から原因の検証を行わなければなりません。検証の手順は次の通りです。
まず、職員のミスによって事故が発生したと仮定した場合、原因の検証は2通りの方法で行います。一つ目は、「ミスの発生防止のチェック手順ができているか」を検証することです。例えば、車椅子を固定したら車椅子を指さして「車椅子の固定完了」と発声する(指差呼称)などの、チェック動作です。2つ目は、「ミスを発見するチェックの仕組ができているか」を検証することです。例えば、「車椅子を固定したら車椅子を引いて固定されているかを確認する」というチェック動作です。これらの2つの原因の検証で重要なのは、後者の「ミスを発見するチェックの仕組ができているか」なのです。
本事例の場合、次のようなヒューマンエラーの原因が考えられますが、1つ目の「ミスの発生防止のチェック手順」で防げるのは①だけなのです。
①車椅子の固定操作を忘れてしまった
②車椅子の固定作業の時にフックをかけ忘れた
③車椅子にフックをかけたが不完全で外れてしまった
④車椅子のフックを間違った場所にかけてしまった
■メカニカルな原因も検証する
さて、職員のミスの検証と共に、メカニカルな原因について検証しなければなりません。どんなに精巧にできた機械・装置でも完璧という保証はありませんし、ご操作によって起こる事故も少なくないからです。しかし、本事例のような車椅子固定装置のメカニカルな原因を検証するのは容易ではありませんが、本事例の事故につながるような不具合を想定することはできます。本事例の事故につながるメカニカルなトラブルは、次のようなケースが考えられます。
・フックを掛け固定スイッチを入れたのにワイアーが締まらなかった
・フックが不良品でうまく掛からず外れてしまった
・固定された後にワイアーが緩んでしまった
・固定された後にスイッチが解除されてしまった
このような、メカニカルなトラブルの原因を検証するために、機械を分解して原因を究明することは不可能ですから、操作してみて誤動作が起こらないかどうかを確認します。
メカニカルな原因の検証は、次のような方法で行います。
①機器の取扱い説明書の操作方法通りに操作しているか確認する
②取扱い説明書に書いてある操作方法に従って操作を行ってみる
③車椅子を変えるなど条件を変えて同じ操作を最低20回繰り返してみる
④これらの検証を文書で記録する
さて、20回同じ操作を繰り返しても誤動作など簡単に現れませんから、機器は正常に稼働するでしょう。ここで、メーカーに電話を入れて次のように話します。「車椅子の固定不備で事故が起こった。職員のミスの可能性もあるが固定装置の誤動作の可能性はないのか確認したい。同一製品で誤動作などの報告は来ていませんか?当施設では、取扱説明書通りに操作試験を繰り返していますが」と。メーカーは、同一の製品について同じような危害報告があれば、これを顧客に公表しなければなりませんから、真剣に対応してくれるはずです。
■車椅子固定装置の欠陥かもしれない
メカニカルなトラブルを検証するために、説明書の通りに操作を繰り返すことで、操作方法の問題点に気付くことがあります。本事例の車椅子固定装置も実際に何度も操作してみると、固定装置のスイッチが無防備なことに気付くはずです。固定装置のスイッチは横を向いていてカバーもありません。おまけに見えにくい低い位置に付いています。車椅子を固定した後に職員の足がスイッチに触れてしまったら、固定装置が解除されてしまうかもしれません。装置を何度も操作してみることで、操作時に偶発的に起きるようなアクシデントも発見できることがあるのです。
さて、本事例の2度目の事故で利用者が亡くなるような重大事故になったら、施設は責任を問われるのでしょうか?偶発的に固定装置のスイッチに職員の足が触れてしまったことが原因だとしたら、施設の過失になるのでしょうか?
職員の誤操作が原因とされて、施設が賠償責任を問われる可能性は高いのですが、メーカーが製造物責任法による賠償責任を問われる可能性も高いと考えられます。なぜなら、通常の操作方法でも誤操作して事故につながるような構造の製品は、その事故の防止に対してメーカーが防止措置を講じる義務があるからです。具体的には、まず誤操作が起きないような安全装置を付けるなどの対策を講じて、それでも事故の危険があれば取扱い説明書に安全上の警告表示をしなければならないのです。この車椅子固定装置のスイッチにカバーをして、応急処置をしてみましたが、メーカーは設計段階でこのようなリスクを想定して安全設計の対策を講じなければならないのです。
